(※写真はイメージです/PIXTA)

生成AIは大量のデータを読み込んでAI自身が知識を獲得する「機械学習」によって、画像、テキスト、動画、音声を生み出すことができます。うまく活用すれば事業を飛躍的に促進する可能性をもつ一方、セキュリティリスクが懸念されています。サイバーセキュリティの第一人者である淵上 真一氏が、生成AIの活用で懸念されるセキュリティリスクについて解説します。

AIが擁する【悪用可能性の問題】

1. 脱獄の問題

生成AIの多くは、回答としてふさわしくないものを出力しないフィルタリングや、悪意のあるプロンプトに応じないガードレールを備えることで、悪用されないようにしていますが、こうした対策をすり抜けてサイバー攻撃などに利用されてしまうことが懸念されています。

 

2. サイバー攻撃への悪用の問題

生成AIがサイバー攻撃で悪用されるケースはいくつか考えられますが、ここでは2つを紹介します。

 

1つは、自然言語テキストの生成による悪用です。たとえば、フィッシングメールの作成、相手をだますようなメールのやり取り、偽のチャットボットに組み込んで機密情報やクレジットカード番号を聞き出す行為などに使用される懸念があります。

 

また、フェイクニュースなどの偽情報の拡散や、企業ブランドを毀損する情報をSNSで発信するような悪用も想定されます。

 

もう1つは、攻撃コードの自動生成による悪用です。AIによるコード生成の技術が高度化しており、これを応用することによりマルウェアなど悪意のあるプログラムを自動的につくることも可能です。

 

3. 勝手LLM(ガードレールやフィルターなし)の問題

LLMは独自に作成することもでき、オープンソースのものも存在しています。真っ当なサービス提供者なら、悪用をできるだけ防ぐためにガードレールやフィルタリングなどの仕組みを搭載するでしょう。

 

しかし、こうした悪用防止の仕組みを入れずにLLMを作成して提供するケースもあり、そのような生成AIの存在を前提に対策を講じたり、怪しいサービスは使わないように周知したりすることが必要です。

 

4. 間接的に悪用する問題

個人情報や機密情報などを窃取する目的で新サービスを立ち上げ、生成AIという話題性でユーザーを獲得しようとするケースにも警戒が必要です。

 

また、ソフトウェア開発の現場におけるリスクが懸念されています。昨今ではオープンソースの部品やサービスを組み合わせて開発することが一般的となっており、エンジニアはWeb上で公開されている既存のプログラムコードを利用します。

 

ライブラリなどを探すために対話型生成AIを使用した結果、ハルシネーションによって本来存在しない架空のものを推奨してくる可能性があります。そのことを知った攻撃者は、架空のものと同名のライブラリを後から作成して実在させることで開発中のソフトウェアにマルウェアを潜入させるサイバー攻撃が可能なのではないかという仮説が立てられているのです。

 

 

淵上 真一

 

日本電気株式会社(NEC)

 

Corporate Executive CISO兼サイバーセキュリティ戦略統括部長

NECセキュリティ取締役

 

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※本連載は、淵上 真一氏の著書『経営層のためのサイバーセキュリティ実践入門』(プレジデント社)より一部を抜粋・再編集したものです

経営層のためのサイバーセキュリティ実践入門

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淵上 真一

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