(※写真はイメージです/PIXTA)

生成AIは大量のデータを読み込んでAI自身が知識を獲得する「機械学習」によって、画像、テキスト、動画、音声を生み出すことができます。うまく活用すれば事業を飛躍的に促進する可能性をもつ一方、セキュリティリスクが懸念されています。サイバーセキュリティの第一人者である淵上 真一氏が、生成AIの活用で懸念されるセキュリティリスクについて解説します。

AIが擁する【倫理的な問題】

1. 倫理面の問題(人権、差別)

2016年、大手IT企業が提供したチャット機能が、チャットを通じて新しい言葉を覚える中で人種差別や性差別を含んだ回答をするようになってしまい、すぐさま公開を停止するという出来事がありました。

 

このように、倫理面で問題となるバイアス(偏向)が生じてしまうリスクがあります。

 

2. 道徳面の問題(トロッコ問題)

AIが抱える道徳面の問題で、よく引き合いに出されるのが「トロッコ問題」です。ブレーキが効かなくなったトロッコが進むレールの先にはポイントがあり、能動的にレバーを操作すれば5人の作業員を助けられる一方で、分岐先にいる1人の作業員は犠牲になってしまう状況での判断を問うものです。

 

生成AIに道徳的な問題に対して意見を求めると、そのときによって見解が異なる「いい加減」なアドバイスであるにもかかわらず、それをインプットする人間の選択には影響を与えてしまうという研究結果が報告されています。

 

3. 法的な問題

・著作権の問題

日本の著作権法では、著作物を「思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」と定義していますが、生成AIの出力結果に著作権があるのかどうかは議論されている最中です。

 

機械学習データなどとして他人の著作物を使うことは認められているものの、有料データベースの無断使用は侵害行為となり得ますし、原作を学習して作られ、原作と類似していれば侵害と認定される可能性があります。

 

そのため、出力結果を利用する場合には、利用者自身が著作権の責任を担わなければなりません。一方で、利用者が有する著作権についても意識が必要です。

 

生成AIサービスによっては利用規約で、プロンプトに入力した内容を無制限かつ無償で利用することを承諾しなければならないものも存在します。

 

・個人情報・プライバシーの問題

多くの生成AIは、インターネット上に公開されているさまざまな情報を利用していると思われ、個人的な情報が同意なしに収集されている可能性があります。そのため、出力結果がプライバシーを侵害している恐れがあります。

 

また、現状では事実とは異なる個人情報が出力される場合もあるため、留意が必要です。

 

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※本連載は、淵上 真一氏の著書『経営層のためのサイバーセキュリティ実践入門』(プレジデント社)より一部を抜粋・再編集したものです

経営層のためのサイバーセキュリティ実践入門

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