原則、65歳からの老齢年金。もらえる予定の年金額をベースに老後の生活設計を立てている人も多いのではないでしょうか。しかしなかには、年金が減らされたり、もらえなくなったりする人がいることをご存じでしょうか? 本記事では石丸さん(仮名)の事例とともに、年金制度の注意点について、FP事務所MoneySmith代表の吉野裕一氏が解説します。
年金月20万円のはずが…定年後も働く65歳、心穏やかな「出戻り社員」のもとへ年金機構から〈戦慄の通知〉が届いたワケ【FPの助言】 (※写真はイメージです/PIXTA)

まさかの年金支給停止

ところが「年金決定通知書・支給額変更通知書」という書類が入った封書が届けられました。開けてみると、記載されていた石丸さんの年金額は思っていた額よりも少ないものとなっており、愕然とします「こ、これは笑っている場合じゃないぞ……」。

 

石丸さんは、「在職老齢年金」という制度があることを知らなかったのです。在職老齢年金は、60歳以上で老齢厚生年金を受け取りながら、会社員などで厚生年金に加入した場合に、一定額以上の場合には、超えた部分の2分の1が支給停止になるという制度です。

 

令和6年度は、この一定額は50万円となっています。今回の石丸さんのケースでは、老齢年金は総額では20万ですが、内訳としては老齢基礎年金が約6万6,000円、老齢厚生年金が約9万4,000円、加給年金が4万円となっていました。在職老齢年金の対象は、老齢厚生年金部分になりますので、9万4,000円が対象となります。

 

支給が停止された年金額

在職老齢年金で支給停止になるのは、50万円以上となります。この50万円という額は、

 

基本月額+総報酬月額相当額

 

となります。基本月額は老齢厚生年金の年額を12で割ったもので、総報酬月額相当額とは、年金の保険料を計算する際に使われる額で、4月から6月までの給与の額を足して3で割ったものを、「厚生年金保険の保険料額表」にあてはめて標準報酬額が決まります。

 

今回の石丸さんのケースでは、基本月額が9万4,000円。総報酬月額相当額は会社から支給されているのは45万円ですが、保険料額表でみると25等級の44万円となります。9万4,000円と44万円を足した、53万4,000円と50万円を上回った3万4,000円の2分の1にあたる1万7,000円が支給停止になりました。

 

「年金が減らされてしまっては、せっかくの老後の計画が台無しだ……。なんとかならないものか……」石丸さんはFPのもとへ相談に行くことにしました。