原則、65歳からの老齢年金。もらえる予定の年金額をベースに老後の生活設計を立てている人も多いのではないでしょうか。しかしなかには、年金が減らされたり、もらえなくなったりする人がいることをご存じでしょうか? 本記事では石丸さん(仮名)の事例とともに、年金制度の注意点について、FP事務所MoneySmith代表の吉野裕一氏が解説します。
年金月20万円のはずが…定年後も働く65歳、心穏やかな「出戻り社員」のもとへ年金機構から〈戦慄の通知〉が届いたワケ【FPの助言】 (※写真はイメージです/PIXTA)

63歳で退職も、物価高の煽りでもう一度会社に戻る

昨年、65歳になった石丸三郎さん(仮名)は、60歳で定年でしたが、雇用延長で63歳まで働いていました。2歳年下の妻の信子さん(仮名)は、61歳までパートで働いていましたが、長女が大学を卒業したのを機に退職。三郎さんと趣味のガーデニングや旅行を楽しんでいました。石丸さんには、25歳になる長男も居ましたが、すでに家を出て一人暮らしをしているそうです。

 

63歳からは退職金や貯えもあったので、65歳からの年金まで収入がなくても生活できると考えていました。石丸さん自身の年金額は月16万円で、加給年金を合わせると20万円程度になります。

 

退職をしてからは、再就職する気もなく、のんびりと暮らすつもりでしたが、円安や資源価格の高騰により、日々の暮らしで節約の必要がでてきたと焦り始めます。

 

65歳になる少し前に、退職金を取り崩す額が増えてきていることで不安に感じていたとき、以前勤めていた会社から、仕事が忙しくなってきているが人材が足りないということで、もう一度働いてほしいという旨の連絡がありました。ちょうど生活費も上がってきているし、妻に働きにでてもらうのも申し訳なく思い、再就職をすることにしました。

 

復帰後の収入

職場復帰したのは65歳になる前の7月。石丸さんは63歳の最終出勤の日に「これでサラリーマン生活は終いだ!」と同僚たちに告げて会社を去りましたが、結局同じ会社へ戻ってくることとなった多少の気恥ずかしさから「へへっ、戻ってきちゃった」とおどけてみせます。同僚たちもあまり変わらぬ顔ぶれだったため、「戻ってきてしまいましたか」と茶化しますが、温かい雰囲気に石丸さんはほっこりとした気持ちになりました。

 

経験もあることや、職責者とはなりませんが現役の社員のサポートなどができることなどもあり、月45万円の支給額になったそうです。手取りでは約38万円で、65歳からの年金と合わせて、60万円弱となります。「月38万円受け取れればこれからは生活が少し楽になるし、年金を受け取りだしてからは毎月10万円くらいは貯蓄もできる。65歳になれば、20万円の老齢年金と加給年金が入ってくるので、もっとゆとりができるなあ。これならある程度働けば、また貯蓄を増やせるだろう」と心穏やかな気持ちになりました。