20〜30代で貯蓄がまったくできていないという世帯は少なくありません。さらに、これは収入が特別低い世帯に限ったことではないのです。根本的な原因はどのようなことなのでしょうか? 本記事ではAさんの事例とともに、物価高に負けない家計の回し方を長岡FP事務所代表の長岡理知氏が解説します。
世帯年収650万円“その月暮らし”の30代サラリーマン「子は嗜好品だから?毎日昼飯用のおにぎりを握って節約も、当然家は買えません。もう限界」…中間層日本人の切実実態【FPの助言】 (※画像はイメージです/PIXTA)

世帯収入を増やすためにやれること

「収入を増やすなんてできたらいいけど難しいよ!」と思う人が多いかもしれません。

 

かつての日本社会ではひとつの会社を勤めあげることが美徳でしたし、それによってライフプランが成り立つ経済環境だったと思います。お金のことはあまり考えず、一生懸命仕事に励めば家計は豊かになっていったことでしょう。しかし現代では、そろそろ世帯年収を上げることを意図的に目指すべきときに来ているかもしれません。

 

世帯収入を増やすためにはいくつか方法があります。

 

・配偶者の年収アップ
・自身の昇進
・自身の転職
・副業(兼業)

 

配偶者が「扶養の範囲内」にこだわる方も多いのですが、子育てや親の介護、健康面など特別な理由がない限り、わざわざ収入を抑えるべき正当な根拠はありません。就職活動が成功するかどうかの問題はありますが、できる限りフルタイムでの勤務を目標にしたほうが、資金繰りとしても老齢年金など社会保障面としても、金銭的メリットがあります。

 

続いて、昇進について。もっともあてにしてはいけない方法かもしれません。中小企業では昇進しても年収が上がるとは限らず、責任と労働時間だけが増える結果になることもあります。しかしいまの仕事を頑張ることで中期的に生活が改善できるのであれば、昇進を目指す意味があります。

 

転職については、多くの人にとって興味があるところでしょう。転職希望者向けのウェブサービスは過去にないほど活性化し、情報を入手しやすくなっています。しかしいまよりも条件のいい転職ができる可能性があるのは30代半ばまで。転職に何度も失敗すると、多くは年収が落ちていくことになります。

 

副業(兼業)を真剣に考えるべき時代に

最後に副業(兼業)についてですが、これはかつての会社員にとってタブーとも言えるものでした。ほとんどの企業が就業規則で兼業を禁止していたはずです。最近大手企業を中心に兼業を解禁する動きがありますが、特に地方の中小企業では依然として禁止しているケースが多いでしょう。

 

これは兼業によって、利益相反行為や顧客情報の不正利用、兼業で得た利益の無申告行為、ネットワークビジネスなどによって社会的信用を失うこと、時間給で兼業をし健康面での不安、などのデメリット面を企業が恐れているからです。もちろん就業規則は遵守しなければなりませんが、勤務先に人生を預け切ってもいいものなのかは疑問が残るところです。

 

副業(兼業)は時給で働くものではなく、あくまでも自営として取り組むと業務をコントロールできるため、勤務先が不安視するデメリット面を解消しやすくなります。

 

副業で得た税引き後の利益は家計を直接的に助けてくれます。月の利益が5万円~10万円程度のスモールビジネスでも、それで生活することは不可能でも副収入としては十分なものになります。家計の収支を改善させ、短い期間で貯金ができれば資金繰りも安定してきます。そのあとで資産運用など次のステージに移ってもいいでしょう。

 

事例の夫Aさんは大学生のときからカメラが趣味で、大切にしてきた機材を売らずに手元に残していました。このカメラを使い、「マッチングアプリのプロフィール写真」を安価で撮影する副業を始めたところ、着実に売り上げがあり、平均して月4万円程度の利益を残せるようになりました。

 

土日だけを使い、屋外で撮影するためスタジオなども不要、撮影時間もさほど長くありません。お客さんの満足度も高く、勤務先に迷惑も掛からないことから、「いい副業をみつけた」とAさんは喜んでいます。

 

このまま継続するだけで貯金ができて資金繰りが改善します。そうなるとマイホームのための自己資金が用意できるかもしれません。また妻のBさんの年収が上がったら、より健全に家計を運営していけるはずです。

 

これからの時代は副業をタブー視せず、家計の資金繰りの目的で取り入れてみてはいかがでしょうか。ただし副業を騙る詐欺も横行しているため、十分に気をつける必要があります。
 

 

長岡 理知

長岡FP事務所

代表