20〜30代で貯蓄がまったくできていないという世帯は少なくありません。さらに、これは収入が特別低い世帯に限ったことではないのです。根本的な原因はどのようなことなのでしょうか? 本記事ではAさんの事例とともに、物価高に負けない家計の回し方を長岡FP事務所代表の長岡理知氏が解説します。
世帯年収650万円“その月暮らし”の30代サラリーマン「子は嗜好品だから?毎日昼飯用のおにぎりを握って節約も、当然家は買えません。もう限界」…中間層日本人の切実実態【FPの助言】 (※画像はイメージです/PIXTA)

世帯年収650万円だが…「お金をまったく貯められません」

<事例>

夫Aさん 32歳 年収400万円 会社員
妻Bさん 32歳 年収250万円 契約社員
子供 5歳、3歳
2人とも退職金制度なし
貯金0円

 

AさんBさん夫妻は、どちらも中小企業に勤務する会社員です。

 

世帯年収は650万円。夫のAさんが勤める会社はコロナ禍で打撃を受け、この3年間昇給していません。妻のBさんは2人目の妊娠を機に、残業が多かった前の職場を辞めて転職しました。しかし小さな子供を抱えているため希望どおりの年収の職には就けませんでした。現在は契約社員としての立場です。

 

2人の最近の悩みは、貯蓄がまったくできないこと。「最近」と言いましたが、結婚してからずっと貯蓄できたことがありません。常に「その月暮らし」をしてきたのです。

 

そろそろマイホームが欲しいと考えていますが、当然自己資金はゼロ。妻Bさんは契約社員であるため、ペアローンは借りられません。夫Aさんだけの年収では、新築の家を手に入れるだけの住宅ローンを借りることは不可能です。たとえ住宅ローンを借りられたとしても、いまの家計では返済は難しいだろうと思っています。毎月7万5,000円の家賃の支払いもギリギリの状態です。

 

毎月の手取り収入と支出はほぼイコール、自動車税などの納税や車検、家電の故障などの臨時支出があると赤字になってしまいます。その都度クレジットカードを使って赤字分を補っていますが、翌月の返済が苦しくなり、カード会社のアプリを使い分割支払いを利用することもしばしばです。

 

自動車ローンやショッピングローンなどの借入(つまり借金)はありませんが、「生活がいつも苦しい」という思いが付きまとっています。ニュースなどで物価が高くなっていると聞くたびに心が苦しくなります。ガソリンスタンドでレギュラーガソリンの単価を見ると、ため息が出ます。

 

生活が苦しいため、最近生命保険(死亡保険と医療保険)をすべて解約しました。自動車保険も車両保険の部分を解約。スマホも格安SIMの月980円のプランにしました。データ容量が少ないため非常に不便なのですが、やむを得ません。自宅の光回線も解約しました。

 

電気料金も節約するため、子供達が寝たあとはリビングで乾電池式のランタンを使っています。夫Aさんの趣味だったテニスサークルも退会して会費を節約。フリマアプリでテニス用具も売ってしまいました。

 

節約のためにAさんは毎朝お昼ご飯用のおにぎりを3つ握っています。1つは妻Bさんに。もう2つは自分用に。これだけで済ますこともあれば、コンビニで小さな惣菜やホットスナック、お菓子を買って腹の足しにすることもあるそうです。

 

それでも生活の苦しさは変わりません。夫Aさんのスニーカーは底に穴が開いていますが、雨の日には浸水するものの、それ以外の日は支障ないと、新しい靴を買うのを躊躇してしまいます。

 

こんな状況から脱却しようと夫婦でFPに相談してみることにしました。