「失敗したくない症候群」の50代独身女性
<事例>
Aさん(女性)
55歳 会社員
未婚
年収550万円
貯蓄 500万円
住宅ローン残高 3,000万円 完済時80歳
Aさんは会社員として勤務する55歳の未婚女性です。30歳のときに両親が相次いで亡くなったため実家はなく、ずっとアパート暮らしをしてきました。「いつまでも賃貸暮らしはできない、老後のことも考えて持ち家を買うべき」と同僚に言われ続けましたが、Aさんはずっと避けていました。
Aさんは失敗を過度に恐れる性格をしているのです。「失敗して後悔するのが怖い」というのが口癖で、新しいことを生活に取り入れるのに時間がかかります。
いまだに携帯電話はガラケーを愛用しています。電話とキャリアメールの機能しか使わず、メッセージアプリは怖くて使えません。当然ながらGAFAのサービスとは一切無縁。ネット上で買い物をするなど考えただけで恐怖を感じるそうです。コンビニで選ぶおにぎりもいつも同じ鮭、新発売の飲料には手を出しません。ファミレスの注文もだいたいいつもドリアを選び、髪型も学生時代から大幅に変えることはなく、車はカローラに乗り続け、車種を変えずに30年以上乗っています。無難好きなのです。
そんなAさんなので、住宅を購入するなど恐怖でしかなかったのです。
しかし住んでいるアパートが解体される予定があり、1年以内に退去するよう管理会社からお願いされたことがきっかけで住宅購入の検討をはじめることになりました。ところが検討を始めただけで、契約の決断がまったくできません。
この住宅メーカーでいいのか、この分譲地でいいのか、この資金計画でいいのか、この壁紙の家でいいのか、分譲住宅でいいのか、マンションがいいのではないのか、など、次々と選択肢を増やしていき、決断までたどり着けません。その理由はやはり「失敗して後悔したくない」でした。
それでもアパート退去の期限が迫ったため、なんとか分譲住宅を購入することで決断。住宅購入の計画は、
自己資金 700万円
住宅ローン 3,000万円
25年返済 変動金利
月返済額 10万6,400円
という内容になりました。アパートの家賃が6万5,000円だったので、月に約4万円支出が増えました。定年退職は65歳。その後15年間も住宅ローンが続くことになります。65歳時の住宅ローンの残債は1,845万円。
「老後のためにお金を貯めなければならない」とAさんは強く思いました。現在の貯蓄は500万円。退職金は1,500万円を想定しています。しかし年齢的にもう昇給はしないし、働き方改革によって残業がなく残業代は見込めません。むしろ年収が減っていくと思われます。
もっとお金を貯める方法はないかと考えているときに、高校時代の同級生に会ったのです。