今回は、法人化で「期間の延長」が可能になる、損失の繰越控除制度について見ていきます。※本連載は、税理士法人ゼニックス・コンサルティングの税理士、関根俊輔氏の著書、『個人事業を会社にするメリット・デメリットがぜんぶわかる本』(新星出版社)の中から一部を抜粋し、個人事業を法人化したときの税金面のメリットについて説明します。

繰越損失の持ち越し期間・・・個人は3年、法人なら9年

個人ならば赤字の繰越しは3年ですが、会社はもっと繰り越せます。また、当年が赤字の場合、前年支払った税金を取り戻すこともできます。

 

個人事業主の場合は、1月1日から12月31日が「会計期間」です。

 

会社の場合は、決算期を自由に決められ、会計期間は決算日前から1年間となっています。そして、この会計期間に生じた黒字や赤字の金額を計算し、それにあわせて税金が課税されます。

 

しかし、会社(事業)は生き物ですから、去年は赤字で、今年は黒字、来年はまた赤字、などとなるケースがあります。

 

そんなときに、たまたま今年が黒字だからといって課税されていたら、過去の赤字分の補填に何年かかるかわかりませんよね。

 

そこで、「青色申告をしている事業者が赤字となってしまった場合、その赤字を翌年度以降に持ち越して、黒字だった決算期に相殺してあげましょう」という制度があります。それが「青色欠損金の繰越控除」という制度です。

 

個人事業主の場合、繰越損失は3年間持ち越すことができます。これが会社となると、繰越控除ができる期間が9年に延びるのです(平成29年4月1日以降に開始する事業年度に生じた欠損金については10年)。

 

資本を投下してから、売上(利益)としてその資金を回収するまでのサイクルを、長期的な視野で見ることができるようになるのです。

 

なお、この繰越しは、国税と地方税の両方に適用されます。

 

※青色申告とは、複式簿記などで記帳をし、それに基づいて正しい申告をした場合に、所得金額の計算について、控除を受けられるなど有利な取り扱いを受けられる制度です。

法人なら「前年の黒字」を繰り越して赤字と相殺可能

過去の赤字を繰り越して、翌年以降の黒字と相殺する制度を説明しました。じつは、その逆として、前年の黒字を当年の赤字と相殺できる方法があります。これを「青色欠損金の繰戻しによる還付」制度といいます。

 

この制度は、各事業年度で生じた欠損金に対して、会社のみ利用できます。個人事業主には適用されません。

 

ただし、この制度は法人税だけで、地方税には同様の規定はありません。

 

【図表】欠損金の繰越解除

※本連載は、2015年12月15日刊行の書籍『個人事業を会社にするメリット・デメリットがぜんぶわかる本』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

個人事業を会社にするメリット・ デメリットがぜんぶわかる本

個人事業を会社にするメリット・ デメリットがぜんぶわかる本

関根 俊輔

新星出版社

個人事業を法人化した際のメリットとデメリットを、図解とともに完全比較! 法人化の最大のメリットである「節税」と、最大のデメリットである「手間」の問題について詳しく解説。 メリットとデメリットを比較した結果、…

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