会社員などの厚生年金に加入している人は、老齢基礎年金と老齢厚生年金の2階建ての年金を受給できますが、自営業などの場合、公的年金は老齢基礎年金のみとなります。令和6年度の満額の老齢基礎年金は昭和31年4月1日以前生まれの人で、月額6万7,808円となり、年金だけで生活を送るのは厳しいといえるでしょう。本記事では大谷さん(仮名)の事例とともに、一定額以下の年金生活者の人への支援制度について、FP事務所MoneySmith代表の吉野裕一氏が解説します。
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「年金生活者支援給付金制度」とは?

年金生活者支援給付金制度とは、令和元年10月から施行された制度で、消費税率の引き上げ分を活用して、公的年金等の収入金額やその他の所得が一定基準以下の人に対して、生活の支援を計ることを目的として、年金に上乗せして支給する制度です。

 

支給要件は、以下の要件をすべて満たす人が対象となります。

 

・65歳以上の老齢基礎年金の受給者

・同一世帯の全員が市町村民税非課税

・前年の公的年金等の収入金額※1とその他の所得との合計額が87万8,900円以下※2

 

※1 障害年金・遺族年金等の非課税収入は含まれない。
 

※2 77万8,900円を超え87万8,900円以下である人には、「補足的老齢年金生活者支援給付金」が支給。

 

この案内は、基礎年金を受給している人で、新たに年金生活者支援給付金を受けることができる人へ、日本年金機構が自動的に判定して送られてくるので、自ら制度について調べて請求をする必要がない制度となっています。同封のハガキを切り取り、「提出日」「氏名」「電話番号」の3つを記入して、返送するだけで手続きが終わり、その後は、年金生活者支援給付金が上乗せされた金額が振り込まれるようになります。

 

支給額は、以下の(1)と(2)の合計額となります。

 

(1)保険料納付済期間に基づく額(月額)=5,310円×保険料納付済期間÷被保険者月数480

(2)保険料免除期間に基づく額(月額)=1万1,333円×保険料免除期間÷被保険者月数480月

 

77万8,900円を超え、87万8,900円以下である人は給付基準額の月5,310円に一定割合を乗じた額の支給となりますが、本記事では詳しい説明は割愛いたします。

 

今回、相談された大谷さんは、29ヵ月の未納期間があったということで、

 

5,310円×451÷480≒4,989円

 

が上乗せ支給されることになったようです。これまでの老齢基礎年金の6万4,000円との合計6万8,989円となり、高額ではありません。しかし、多少なりとも収入が増えたこと、すべてに見放されたように思っていたなかで、救済制度があったことに救いを感じたそうです。