毎年、誕生月に届く「ねんきん定期便」。そこに書かれた一文「年⾦受給を遅らせた場合、年⾦額が増額します。」に、「どうせなら、年金はたくさんもらえたほうがいい」と、年金の繰下げ受給を決める人もいるでしょう。ただきちんとシミュレーションをしたうえで判断をしないと、「実は損をしていました……」という事態に陥る場合も。みていきましょう。
日本年金機構「年⾦額が増額します」に、月収44万円・55歳のサラリーマン〈繰下げ受給〉を決断…70歳で〈年金4割増〉にガッツポーズも「年金ルール」知って撃沈

年金の繰下げ受給…「年金増額!」の裏で、実は損をしている可能性も

定年まであと5年となった55歳のサラリーマン。老後の生活が急にリアルに感じられるようになり、それまで形式的にみていた「ねんきん定期便」をまじまじと眺め、そこで「繰下げ受給」に関する文言を見つけました。

 

男性の勤める会社では60歳で定年。希望すれば嘱託社員として70歳まで勤務することができます。男性も漠然とではありますが、働けるうちは働こうという気でいたといいます。そんなときに見つけた「年金の繰下げ受給」に関する文言。「これはいい!」と、制度を利用することにしたとしましょう。

 

55歳時点の給与は月収で44.0万円、年収で725.5万円。60歳で嘱託社員になった際には、月収28.5万円、年収で434万円となります。給与は大幅にダウンしますが、その間も厚生年金に加入し続けているので、その分、65歳から受け取る年金額はアップ。

 

60歳定年で現役を引退した場合、65歳で受け取る老齢厚生年金は10.3万円。併給の老齢基礎年金と合わせると月17.1万円ほどです。一方で60歳以降は非正規社員として働いた場合、65歳で受け取る老齢厚生年金は月11.6万円と、月1.3万円アップします。

 

そして「65歳以降も働くから」と「繰下げ受給」すれば、その分、年金は増額。さらにその間も厚生年金に加入していれば、さらなる年金増も狙えます。仮に「年金の繰下げ」だけ考えても、受取額は42%アップ。老齢基礎年金も老齢厚生年金もどちらも繰下げ受給したとしたら、年金は月18.4万円→月26.1万円になります。

 

――年金4割アップ!

 

と思わずガッツポーズするのではないでしょうか。

 

ただ残念なお知らせをしなければなりません。それは「年金の繰下げ受給」のデメリット。大きく3つ、挙げられます。

 

まず総受給額が減る可能性があるということ。早く亡くなってしまうと、65歳で年金で受け取った場合と比べて損をするというものです。ただ人の寿命は神のみぞ知るところ。最後まで得か損かは分かりません(関連記事:『【早見表】年金はいつ受け取るのが得?「額面」と「手取り額」の損益分岐点』)。