60歳定年で仕事辞められるかどうかの判断基準
――何歳まで働きたいですか?
定年間近の50代に聞いたところ、「51~60歳」が23.7%、「61~65歳」が32.7%、「66~70歳」が19.1%、「71~80歳」が14.0%、「81歳以上」が2.0%でした。
では「その年齢まで働きたいと思うのはなぜか?」を聞いたところ、「生活の糧を得るため」が最も多く83.4%と圧倒的。次に「いきがい、社会参加のため」で43.2%。「健康にいいから」26.6%、「時間に余裕があるから」11.5%、「定年退職の年齢だから」10.4%と続きます。
働く理由はひとつでないにしろ、「生活のため」という人が圧倒的です。一方で、「生活ができる目途が経ったら仕事を辞められる」ともいえるでしょう。そのひとつの基準が年金受給が始まる65歳。実際に「何歳まで働きたいか」の問いに対して、半数を超えるのが「65歳」。これは年金受給が始まったら、生活できる目途が立つということの裏返し。
現在、多くの企業で60歳を定年とし、以降は再雇用か勤務延長可、制度に違いはあれど、引き続き働くことができます。おおよそ8割ほどが働き続け、定年で仕事を辞めるのは2割程度と少数派。そして原則、年金受給開始となる65歳を目途に仕事を完全に辞めて年金生活に入る……これがよくあるパターンとなっています。
厚生労働省『令和4年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況 』によると、65歳以上の老齢厚生年金受給者の平均年金額は、男性で16万7,388円、女性で10万9,165円。夫婦共働きであれば月27.5万円ほど、奥さんが専業主婦であれば23.5万円ほど。これだけ年金を受け取れるなら、仕事を辞めても暮らしていける……そう思えるようです。
一方で定年で仕事を辞められる人はどのような人か、考えてみましょう。総務省『家計調査 家計収支編 2023年平均』によると、65歳以上の高齢者夫婦の1ヵ月の平均消費支出は25万0,959円。これを60歳以降の夫婦の1ヵ月の支出とすると、1年で300万円。年金の受取り開始までの5年間で1,500万円が最低でも必要だといえます。
仕事をしていなければ、貯金通帳から毎月25万円、1年で300万円が減っていく……現役時代にはなかった「貯金通帳からお金が減っていくばかり」という現象。そんなストレスに耐えられるだけの貯蓄があれば、60歳定年でスパッと仕事を辞めることができそうです。
厚生労働省『令和5年国民生活基礎調査』によると、高齢者世帯のうち、26.4%が「生活が大変苦しい」と回答。さらに「やや苦しい」も合わせると59.0%に達します。前年と比べると、10ポイント以上も上昇。やはり物価高の影響は、公的年金がベースとなる高齢者にはかなりこたえているようです。