住宅ローンを組む際は、問題ないと思っていても、いざローンの返済が始まりしばらくすると「なにかが苦しい」と、家計に頭を抱える家庭は少なくありません。それは、いわゆる「パワーカップル」といわれるような高所得夫婦にも多くみられ……。本記事では湾岸タワマンを購入したAさん夫婦の事例とともに、高所得世帯が陥りがちな家計トラブルの解決策について、長岡FP事務所代表の長岡理知氏が解説します。
ハアハア…世帯年収1,450万円の30代・上京パワーカップル“1億円超・湾岸タワマン”を購入も…3年後には首が絞まり「買えたのに。」と涙ぐむワケ【FPの助言】 (※画像はイメージです/PIXTA)

見栄っ張り夫婦、憧れの「湾岸タワマン」を購入

夫婦はこれまで、高級輸入車を2台、高級時計、ブランドバッグ、ブランド服などを購入し続けることに執着してきました。購入したものを撮影してSNSにすぐに投稿。コメント欄ではモノを褒めてくれる言葉で埋め尽くされます。あまりにも派手な生活を演出しているせいもあって、夫妻のアカウントのフォロワー数は一時数万人にまで増えました。

 

なかには「見栄っ張りの田舎者」「全身ブランド品で成金」などと揶揄する辛辣なコメントも少なからずあります。

 

「田舎生まれの見栄っ張りキャラを自称しているので、別に中傷されてもなんとも思わないですね。むしろ人気の秘訣です」と夫Aさんは笑います。

 

そんな生活のせいで預貯金は200万円のみ。それも数年前に亡くなった夫Aさんの祖父からの相続財産です。これがなければ預貯金は0円という状態です。

 

車やブランド品はすべてクレジットカードやローンでの購入です。ブランド品はフリマアプリなどでも売却しているので完全な浪費ではありませんが、当然ながらいくら売却しても購入価格を上回ることはなく、確実に「損」を出しています。

 

そんな夫婦がタワーマンションの購入を決めたのが3年前。コロナ禍の初期のころでした。住むなら絶対に湾岸エリアのタワーマンションと決めていた夫婦は、営業マンに提案されるがままにペアローンで購入することに。

 

預貯金がないのでフルローンでの購入です。世帯年収の約7倍にもなる1億円超の物件でした。自己資金がないのが銀行審査には不利だと夫婦は考えていたようでしたが、事前審査はすんなりと通過。それに喜んだ夫婦はすぐにマンション購入の契約をしたのです。

マンション購入から3年…

マンション購入から3年が過ぎ、家計の苦しさが深刻になって、夫妻はハアハアと息を切らしながらファイナンシャルプランナーにアドバイスを依頼しました。

 

「購入前にファイナンシャルプランナーに相談して問題ないと言われました。それに、ローン審査も通って買えたのだから問題と思ったのに……」妻Bさんは涙ぐみながら話します。

 

購入前に相談したファイナンシャルプランナーは、不動産会社の営業マンから紹介されたそうです。「年収的にマンション購入には問題ない」「むしろインフレリスクに備えたほうがいい」などとアドバイスをし、投資信託や保険などの金融商品を夫妻に販売したようです。この提案によって、夫妻の毎月の支出は8万円に増えています。年収が1,450万円ありながらも自力で預貯金を作れない夫婦に対し、「強制的にお金が貯められ、しかも増える」という勧誘トークだったようです。ファイナンシャルプランナーとしてのアドバイス内容に間違いはありませんが、夫婦の浪費癖などの現状をなにも変えず、金融商品を購入しただけで人生が安定することはありません。

 

無計画きわまるどんぶり勘定家計

夫婦が浪費をし、SNSで承認欲求を満たす一連の行動はそのまま放置されているのです。夫婦が「なにかが苦しい」と感じている原因は、言うまでもなく家計簿などの記録を一切つけていないことからくるものです。ファイナンシャルプランナーが家計の収支を丁寧に計算していくと、次のような状態でした。

 

住宅ローン返済:毎月 22万647円、ボーナス時 47万6,698円

管理費:1万6,000円

修繕積立金:1万4,000円

自動車ローン返済:毎月 7万円

ショッピングローン返済:毎月10万円

投資信託・保険:毎月 80万円

 

これだけで毎月の支出は約50万円です。月の手取り月収が約60万円程度ですから、実質の生活費は10万円程度になります。これに加えて、不要になったブランド品をフリマアプリで売却しているので、売れたときに少しだけ余裕ができるという感覚でしょう。

 

さらに夫婦は2人の子供を海外の大学に留学させたいという希望を持っています。「これでは苦しいはずです。留学など不可能です」とファイナンシャルプランナーが冷静に言います。「なにから変えたらいいでしょうか」と妻のBさんが真剣に質問しました。