意向がはっきりしない場合は、相続開始を知らせて6ヵ月待ってみる
4. 特別寄与者の意向が確定しない場合には、特別寄与料請求の除斥期間の経過を待つことも検討する
兄の元妻に意向を尋ねたのに対し、兄の元妻が特別寄与料を請求するか否かの態度を明確にしないということが考えられます。
上記3. で述べたとおり、特別寄与者に特別寄与料を支払うべきか、また、いくら支払うこととなるかは、遺産分割の方針に影響を与えることとなるため、不確定な状態が続くことは避ける必要があります。
そのため、特別寄与料に関する協議が調わない場合に特別寄与者が家庭裁判所に審判を求めることができる期間につき、特別寄与者が相続の開始および相続人を知った時から6か月または相続開始の時から1年以内という制限が設けられています(民1050②)。
この期間は除斥期間と解されており(一問一答193頁)、時効のように完成猶予や更新はありません。
本件で、兄の元妻が態度を明確にしない場合には、上記2. のとおり相続が開始したことおよび相続人を兄の元妻に知らしめ、それから6か月が経過するのを待って、除斥期間の経過により特別寄与料を請求することができない状態を確保した上で、遺産分割を成立させる方が確実といえます。
ただし、相続税納税期限(相続開始から10か月)との関係で、相続発生後6か月経過してから協議を始めていたのでは納税期限に間に合わないということもあり得るので、6か月の経過を待っている間に、並行的に遺産分割協議を進めておく方が安全でしょう。
〈執筆〉
吉岡早月(弁護士)
平成23年 弁護士登録(東京弁護士会)
令和3年6月 個人情報保護委員会事務局参事官補佐(~令和5年5月)
〈編集〉
相川泰男(弁護士)
大畑敦子(弁護士)
横山宗祐(弁護士)
角田智美(弁護士)
山崎岳人(弁護士)