「SNSや掲示板で他人の誹謗中傷をする」と聞いて、加害者の年齢層をどのように想像するでしょうか。「20代の若者」と考えている人も多いかもしれません。しかし実際は……。本記事ではAさんの事例とともに、高齢者のネット上のトラブルについて、長岡FP事務所代表の長岡理知氏が解説します。
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意外にも40~50歳代に多い…誹謗中傷を行う人

2022年1月に弁護士ドットコムが行った調査によると、「誹謗中傷を行ったことがある」と回答した人のうち、50歳代は24.4%、40歳代は22.7%と40歳代~50歳代がおよそ半数を占めていることがわかりました。

 

加害を行った場所は「匿名掲示板」「X(旧Twitter)」「LINE」「ニュースメディアのコメント欄」「Facebook」の順番に多くなっています。匿名掲示板は25年ほど前から流行しはじめ、誹謗中傷による被害が社会問題となったことがあります。その当時に20歳代、30歳代で誹謗中傷にのめり込んだ人たちが現在40歳代~50歳代となり、他人への加害を行うことに対してハードルが低いままであるということも考えられます。ネットリテラシーの低さから、いまでもインターネットが「匿名」だと信じている人もいるのかもしれません。

 

名誉棄損罪と侮辱罪

インターネット上の誹謗中傷は刑事責任を問われる可能性のある犯罪行為です。名誉棄損罪、侮辱罪、信用毀損罪、脅迫罪などが当てはまり、有罪であれば懲役・禁錮、罰金などが法定刑となる重大な犯罪です。特に侮辱罪は2022年7月に改正され、法定刑がより重くなりました。

 

名誉棄損と侮辱はそれぞれ異なり、名誉棄損は「事実を広め名誉を傷つけること」、侮辱は「事実に基づかないデブ、ブスなどの悪口を言うこと」と覚えるとわかりやすくなります。

 

刑法231条一項によると、名誉毀損罪について「公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金に処する」と、明記されています。

 

たとえば自分の妻が職場で不倫したからと言って、相手男性の職場で不倫の事実を多数に知らしめるような行為をすれば名誉棄損罪に問われます。それが事実であろうと公然のものにすることで名誉棄損が成立するのです。

 

一方で刑法231条では侮辱罪について、「事実を摘示しなくても、公然と人を侮辱した者は、拘留又は科料に処する」と書かれてあります。事実に基づかない噂話を面白おかしくネットに書き込んでいると、自分はからかっているつもりでも侮辱罪が成立してしまいます。

 

前述の弁護士ドットコムの調査によると、インターネット上の誹謗中傷をした人は、それが「正当な批判、論評だと思った」と考えていることが多いようです。事実に基づくため批判してもいい、言論の自由だと思いがちですが、言い方を間違えてしまうと名誉棄損罪に問われることがあるのです。

 

「匿名で正義を過剰に振りかざす」人たちの存在も社会問題のひとつです。批判と誹謗中傷の区別がつかなくなり、さらに攻撃的な感情を増幅させて、安易に掲示板やコメント欄に書き込んでしまうと犯罪となってしまいます。

 

2022年10月には「プロバイダ責任制限法」が改正され、誹謗中傷した者の情報開示請求の裁判手続きが簡単になりました。匿名だと信じて誹謗中傷を行っていると、スピーディに本人が特定されるということです。ある日弁護士を通して内容証明郵便が届き慌てて謝罪する……そんな事案が増えています。

 

ではもし、その加害者が想像以上に高齢の人だったとしたら、どう思うでしょうか。