「SNSや掲示板で他人の誹謗中傷をする」と聞いて、加害者の年齢層をどのように想像するでしょうか。「20代の若者」と考えている人も多いかもしれません。しかし実際は……。本記事ではAさんの事例とともに、高齢者のネット上のトラブルについて、長岡FP事務所代表の長岡理知氏が解説します。
母に捨てられ、虚無老後を送る〈年金12万円〉65歳・元公務員の父。哀れに思い〈月収54万円〉35歳長男が同居を受け入れも…次々に弁護士から「謎の封書」が届いたワケ【FPが解説】 (※画像はイメージです/PIXTA)

暇な父親は一日中パソコンにかじりつく

特に趣味もなく友人もいない父Bさんは退職してから一日中パソコンの前に座るように。トイレへ行くにもスマホを持っていきます。ニュースメディアを毎日長時間見ていて、YouTubeやSNSもよく眺めているようでした。

 

「お金もかからないからいいか……」とAさんは軽く考えていました。

 

しかしある日、ダイニングテーブルの上に白い封書が置かれているのに気づきました。父親宛の手紙でした。
乱雑に封が破られているのでつい中を見てしまいました。

 

どうやら内容証明郵便のようです。法律事務所の名前も記載されています。その内容を読んでAさんは目を疑ってしまいました。

 

父親のBさんがインターネット上の匿名掲示板において、風俗嬢を執拗に誹謗中傷し続け侮辱罪に問うという内容でした。謝罪と慰謝料の請求をするとのことです。誹謗中傷の内容について一部引用されていましたが、目を覆いたくなるようなひどい文言が並んでいます。

 

父Bさんに手紙を見た旨を伝え真偽を問うと、うるさい!と激しく反発します。「無視したら警察沙汰になるかもしれない、示談の余地があるかもしれないので早く弁護士に連絡したほうがいい」と言っても、返事をしません。

 

やむを得ず弁護士に連絡すると、本来は本人以外とは交渉しないが高齢者であるため息子Aさんと会ってもいいということでした。弁護士に会って詳しい内容を聞くと、どうやら父Bさんは当該の風俗店に通い詰めていて、従業員の女性(Cさん)を気にいっていたが、「店の外で会ってほしい」「旅行に行こう」などとしつこく迫ったため、店側はNG客としてブロックしたとのこと。それに腹を立てた父Bさんは匿名掲示板に当該従業員について中傷を始めたと思われるとのことでした。

 

「Cの実家は〇〇町で親の勤務先は〇〇」

「Cは性病で、うつされてしまった」

「Cの彼氏は〇〇」

 

などと一日に数十回書き込み、営業妨害を行ったと弁護士から説明を受けました。一部事実もあるが、根拠のない嘘も多いとのこと。

 

裁判になる前に示談したいという旨を弁護士に伝え、慰謝料として50万円を支払うことになりました。本人に話し合いの結果を伝えても無視。きっと恥ずかしいのだろうと思い、この件はこれで収束させることにしたのですが……。