「SNSや掲示板で他人の誹謗中傷をする」と聞いて、加害者の年齢層をどのように想像するでしょうか。「20代の若者」と考えている人も多いかもしれません。しかし実際は……。本記事ではAさんの事例とともに、高齢者のネット上のトラブルについて、長岡FP事務所代表の長岡理知氏が解説します。
母に捨てられ、虚無老後を送る〈年金12万円〉65歳・元公務員の父。哀れに思い〈月収54万円〉35歳長男が同居を受け入れも…次々に弁護士から「謎の封書」が届いたワケ【FPが解説】 (※画像はイメージです/PIXTA)

度重なる内容証明郵便

風俗店でのトラブルから半年ほど過ぎたころ、再び父親宛の内容証明郵便が届きました。また中を見てみると、今度はSNSで女性利用者を中傷し続けたというもの。しかもこの女性の個人情報をネット上に無断で公開したと書かれてあります。

 

そしてその翌年も同じように内容証明郵便が……そのときは近所のスーパーの女性店員への誹謗中傷を掲示板サイトに書き込んだという内容でした。

 

どの事案も女性へのストーカー行為の末の誹謗中傷であることが共通しています。

 

「こんな女性に入れ込む父親だと思っていなかったな……」Aさんは誰にも相談できず滅入ってしまいました。

 

トラブルの都度、息子のAさんが示談金を支払い解決するのですが、今後が不安になります。せっかく同居して家計を節約しているのに、度重なる示談金で貯蓄が減っていきます。住宅ローンの繰り上げ返済のために用意しておいた300万円の大半は慰謝料の支払いで失ってしまいました。

 

今後も父親がネット上で大暴れを続け、もし自分の仕事の取引先に関係する人に加害をしたら……? 取引先企業そのものに加害をしたら……? 自分は仕事を辞めざるを得なくなります。

 

あるいは父親のことに一切かかわらず示談金も手助けしなかったらどうなるでしょうか。刑事事件に発展しもし実名を報道でもされたら、家族の自分はやはり仕事を失うことになるでしょう。女性への脅迫行為におよんだら確実に刑事事件です。

 

再婚も考えていますが、父親がこの状態で同居していてはそれもいずれ失敗します。だからといって父親の行動を監視し続けるわけにもいかないし、ほかに趣味や友達のいない父親からパソコンやスマートフォンを取り上げるのは酷な気もします。

 

定年退職まで家族のために働いてきて、退職金の振り込み日の翌日に離婚され、なんの希望も楽しみもなく老後を過ごす父親が、なにかのきっかけで感情を暴走させたのだろうとも思います。元妻はあっけなく再婚し、疎外感に苦しんでいるのかもしれません。

 

Aさんはそう思いつつも、自分の仕事と貯蓄、買った家を守るためにも、父親に対して「ネットの情報で刺激を受けるのがよくないので、しばらくのあいだ、パソコンやスマホは触らないでほしい。女性のいる店にも行かないでほしい」と告げました。

 

案の定、父親は無視していましたが、自分のことを情けないと思うのか生気が失われたような表情を浮かべていました。