2024年3月19日、日本銀行は金融政策を決める会合で、マイナス金利政策を解除する見直しを決定しました。これにより、多くの消費者にとって関心の的となったのが、住宅ローンの金利です。本記事ではBさん夫婦の事例とともに、金利上昇のリスクとペアローンのリスクの密接な関係について、長岡FP事務所代表の長岡理知氏が解説します。
マイナス金利解除で「家を失う夫婦」続出か…世帯年収1,320万円の30代パワーカップル、念願のマイホーム購入→3年後に絶体絶命「売るしかない」【FPが解説】 (※画像はイメージです/PIXTA)

FPに相談してみた

妻Bさんは今後、家計をどのように管理していくべきかFPに相談してみました。金利上昇のことも気になります。

 

FPにすべて正直に話したところ、まず言われたのは、「うつを軽く考えないほうがいいですよ」ということでした。

 

「うつは回復が簡単ではないうえに、しっかり休養しないと再発もします。お金のために無理に働いて、子育てもワンオペの状況では、いい方向にはいきません。仕事を失ったら元も子もありません」

 

FPはしっかりと休職をして、ある程度のストレスに耐えられる体調になってから復帰するほうが、損得でいっても得だと言います。しかし、傷病手当をもらえる期間は限られているし、住宅ローン金利が上がるともっと生活は苦しくなってしまいそうです。

 

そして不安にさせるものがもうひとつあります。妻Bさんの実家に住む妹が精神疾患を抱えているのです。両親は離婚しているため、母親がパートで働き、障害年金と合わせて生活していますが、いずれ難しくなります。そうなるとBさんが仕送りを続ける必要が出てきます。

 

「家を買うときにはまったく考慮していませんでした……」妻Bさんは不安そうです。

 

FPが状況をまとめると次のようになります。

 

・住宅購入時にリスク対策をまったく取らなかったのはミス
・ペアローンなら大きく借りられるにしても、借り過ぎている
・住宅ローンの返済、親への仕送り、子供の教育、自分たちの老後を同時に対策しなければならない
・夫婦のコミュニケーションが雑であるため、この現状でも「頑張る」しか解決策がなくなっている

 

そこで現状を改善するためにアドバイスされたことは、

 

・住宅よりも、健康と仕事を維持することが重要
・いまは休職をし、休養と子育てに専念する
・住宅ローンの変動金利は上がっていくので状況はもっと苦しくなる
・家を任意売却することを検討する
・オーバーローンは残るが、今より生活は楽になる
・賃貸暮らしを続け、定年退職後に購入する金融資産は作れる

 

「健康が戻ってくれば、やり直しはきく世帯年収です。仕事を失わないようにだけしてください」とFPが言います。

 

せっかく購入した家をわずか3年で売却するのは、近隣からも好奇の目で見られるかもしれませんが、無計画なペアローン、そして変動金利での多額の借入をしたのがミスだったと諦めることにしました。

 

夫Aさんにその旨を話すと、とても困惑していました。しかし夫だけの年収で返済していける借入額ではありません。やり直しがきくならいくらでもやり直したほうがいいはずです。夫Aさんは自分の母親の顔色をまた気にしていましたが、やがて覚悟を決めたのか任意売却するための業者を選び始めました。

 

安易に家を買ったのが失敗だったと、夫婦で話し合えるほどには感情も落ち着いているようです。