2024年3月19日、日本銀行は金融政策を決める会合で、マイナス金利政策を解除する見直しを決定しました。これにより、多くの消費者にとって関心の的となったのが、住宅ローンの金利です。本記事ではBさん夫婦の事例とともに、金利上昇のリスクとペアローンのリスクの密接な関係について、長岡FP事務所代表の長岡理知氏が解説します。
マイナス金利解除で「家を失う夫婦」続出か…世帯年収1,320万円の30代パワーカップル、念願のマイホーム購入→3年後に絶体絶命「売るしかない」【FPが解説】 (※画像はイメージです/PIXTA)

住宅ローン金利上昇で「家を失う世帯」の共通点

住宅ローンの金利上昇によって家計破綻のおそれがある家庭は、世帯年収に限らず一定数存在します。特に自己資金を入れずフルローンで購入している家庭は、すこしの金利変動で家を失う危険があります。

 

子供のいる世帯で30歳前後であれば、安全な融資額の目安は世帯年収の5倍程度です。税込みの世帯年収が1,000万円であれば5,000万円、500万円程度であれば2,500万円ということになります。これを超える金額は自己資金で賄うことが理想です。

 

金融機関が勧める無茶な融資

ところが銀行によっては、世帯年収の8倍以上の融資を行っている事例が少なくありません。その多くは、

 

自己資金ゼロ+フルローン+ペアローン

 

での購入です。

 

さらに地方銀行によっては返済期間が40年~50年の住宅ローン商品も存在し、最長の年数でしか審査が通らない年収の世帯も数多く住宅を購入しています。

 

住宅価格が高騰している昨今、ペアローン利用はめずらしくありません。しかし、自己資金が乏しいなかでの安易なペアローンは、金利変動リスクに対して非常に弱く、収入減少や病気などのリスクが加われば一気に家計崩壊へと突き進むことになります。

 

筆者が長年住宅購入者の相談を受けてきた経験から、今後住宅ローン金利が上昇することで家を失う世帯は激増すると想定しています。特に地方都市の低所得層で、フルローン+ペアローンにて購入している人達はリスクが極めて高いと思われます。

 

パワーカップルのように世帯年収が高い層にとっても、それは無縁ではありません。購入時の状況によっては、今後の金利上昇が家計破綻に繋がるおそれがあるのです。ここから金利変動+ペアローン+フルローンによって家を売却することになった事例を紹介していきます。

ペアローンで1億1,000万円の戸建てを購入したパワーカップル

<事例>

夫Aさん 36歳 会社員 年収700万円

妻Bさん 34歳 会社員 年収620万円

子供 3歳

預貯金 1,000万円

住宅ローン借入額 1億1,000万円(金利0.4%、35年返済)

毎月の返済額 20万4,152円

ボーナス時加算 45万9,698円(年2回)

 

AさんとBさんはともに会社員の夫婦です。大学を卒業してから大手企業に勤務し、6年前に結婚してから共働きを続けてきました。

 

世帯年収は1,320万円。いわゆるパワーカップルと呼んでも差し支えありません。潤沢な年収をもとに3年前に住宅を購入しました。当初は資産性の高さからタワーマンションを希望していましたが、将来の大規模修繕への不安があり、戸建てを選択。土地面積30坪、延べ床面積28坪の戸建てです。駅から徒歩10分という好立地であること、夫婦それぞれの職場まで電車で20分程度であること、狭いながらも注文住宅であることが決め手でした。

 

値段は1億1,000万円。年収に対して預貯金が少なく、フルローンでの購入です。世帯年収の約9倍近くにもなります。
毎月の返済額は約20万円、ボーナス時は約46万円。ふたりの年収から計算すると決して無理な金額ではありません。

 

しかしそれは、「元気で働けていたら」の話です。Aさん夫婦に暗雲が立ち込めたのは、住宅購入から1年ほど過ぎたころでした。