2024年3月19日、日本銀行は金融政策を決める会合で、マイナス金利政策を解除する見直しを決定しました。これにより、多くの消費者にとって関心の的となったのが、住宅ローンの金利です。本記事ではBさん夫婦の事例とともに、金利上昇のリスクとペアローンのリスクの密接な関係について、長岡FP事務所代表の長岡理知氏が解説します。
マイナス金利解除で「家を失う夫婦」続出か…世帯年収1,320万円の30代パワーカップル、念願のマイホーム購入→3年後に絶体絶命「売るしかない」【FPが解説】 (※画像はイメージです/PIXTA)

産後に起きた悲劇

住宅購入から1年後に妻Bさんが出産。産休と育児休業を十分に取得する計画を立てていましたが、出産後1ヵ月を過ぎたころからBさんは激しい動悸と呼吸困難に襲われるようになったのです。赤ちゃんの世話に神経質になりすぎたせいなのか、常に気持ちが落ち着かず、焦燥感のような感覚に24時間囚われて、気づけば涙が止まらない状態に。

 

出産直後から夫の母親が家に連日泊まり込み、「母というものは」「育児というものは」と古い価値観を語り続け、心底げんなりしたのも悪影響だったかもしれません。

 

夫は出産前と変わらずに仕事をして帰ってきて寝るだけ。Bさんを積極的に手伝おうとはしません。自分の母親がいるから安心だと思っているようでした。

 

「とても疲れてる」と妻Bさんが夫とその母親に訴えますが、ふたりとも「そんなの甘えだよ」と言って聞く耳を持ちません。「苦労してこそ母になるのよ」という義母の変わらない精神論に絶望的な気持ちになり、ついに自宅玄関で倒れてしまいました。

 

救急車で運ばれた結果、状況が深刻であると判断され、そのまま精神科への入院となりました。そこから2ヵ月後に退院したものの、家に帰ってみると、夫の母親がすっかり娘の親の役割を気取っている状態。

 

「あなたがしっかりしないから、子供が可哀想」と再びいつもの調子で言い始め、「昔はうつ病など存在しなかった、いまの若い女性は甘えすぎて困る」などともはや暴言を吐く有様です。

 

もうダメだと思った妻Bさん。夫に離婚したいと告げます。驚く夫Aさん。

 

「お義母さんに出ていってもらってください」といつもになく激しい口調で伝えました。母親は驚くと同時に不機嫌になり、「自分勝手な嫁なんかいらない!」と捨て台詞を吐いて出ていったのです。

 

夫はうろたえていましたが、その日のうちに夫と話し合いを持ちました。

 

「早く仕事に復帰しないと住宅ローンが払えないよ」信じられないことに、夫Aさんは住宅ローンの返済を真っ先に気にしていました。Bさんの入院中に母親が夫に言い続けていたのでしょう。

 

しかし夫が不安になっているのも理解はできます。毎月20万円の返済は妻Bさんも働いていないと難しいのですから、当然だとは思います。

 

「わかりました、仕事に復帰しますが、お義母さんは今後家に入れないでください」Bさんはそう強く念を押しました。

 

出産から半年後、子供を預け、病気を抱えながら無理に職場復帰しました。しかしもう以前のような仕事ができないことに気づくのにはすぐでした。

 

簡単な計算に時間がかかり、短い会議でも息が詰まるような気持ちになります。さすがに周囲がBさんの不調に気づいたため、病気のことを打ち明けました。部署を異動し少し仕事が楽になったものの、年収は以前よりも100万円減ってしまいました。

 

疲れ果てて仕事を終え、保育所に迎えにいき、自宅に戻って来て家を見ると涙が出てしまいます。あんなに欲しくて手に入れたはずの家が、いまはもう重荷になっている。そんな気持ちで押しつぶされそうです。

 

そんなときに、テレビでは住宅ローンの固定金利が上昇する報道があり、ついには変動金利が上昇するという話題も出始めより不安になってきました。

 

「金利が上がったら、私はもっと頑張らなければならないのか……」また呼吸が苦しくなりそうで恐怖を感じます。