2024年3月19日、日本銀行は金融政策を決める会合で、マイナス金利政策を解除する見直しを決定しました。これにより、多くの消費者にとって関心の的となったのが、住宅ローンの金利です。本記事ではBさん夫婦の事例とともに、金利上昇のリスクとペアローンのリスクの密接な関係について、長岡FP事務所代表の長岡理知氏が解説します。
マイナス金利解除で「家を失う夫婦」続出か…世帯年収1,320万円の30代パワーカップル、念願のマイホーム購入→3年後に絶体絶命「売るしかない」【FPが解説】 (※画像はイメージです/PIXTA)

日銀、マイナス金利解除を決定

2024年3月、日本銀行がマイナス金利の解除を発表しました。このニュースを特に気にしているのは、現在住宅ローンを返済中の人や、これから住宅ローンを借りようとしている人かと思います。

 

多くの人の興味は「住宅ローンの変動金利は今後上昇するのか?」ということに尽きます。返済負担率ギリギリで融資を受けている人は、毎月の返済額が数万円増えるだけで生活への影響が甚大でしょう。

 

たとえば毎月の返済額が3万円増えたとすると、25年間で増加する支出は720万円。平均的な普通自動車の価格の2台分です。「老後の2,000万円問題」が取り沙汰された時期がありましたが、2,000万円を貯められていたはずの人でも720万円が利息で飛ぶわけですから、住宅ローンの金利上昇は人生設計自体に大きな影響をおよぼすことがわかります。

 

変動金利は本当に上昇する?

実際のところ、変動金利は上昇するのでしょうか。

 

そもそも住宅ローンの変動金利は各銀行が定める「短期プライムレート」を参考にして決められています。短期プライムレートは、日本銀行の政策を伝える役割を持つ「無担保コールレート(オーバーナイト物)」を目安のひとつにしていますが、銀行が独自に定めるものであり、日本銀行の政策がダイレクトに住宅ローン金利に反映されるわけではありません。

 

今回の日本銀行の発表を受けても、三菱UFJ銀行と三井住友銀行は短期プライムレート(1.475%)を据え置くことを決めています。このことから企業への貸し出し金利や住宅ローン金利にはまだしばらく大きな変動は見られないと推測できます。

 

しかしこれまでの状況があまりに「異次元」であり、ゆっくりと「正常」に戻りつつあることに注目すべきです。さらなる利上げが続けば、やがて住宅ローンの変動金利に影響をおよぼし始めるのは必至で、それがそう遠くない未来であると覚悟すべきでしょう。