
地方自治体が移住を促進する理由
近年、「移住」という単語を見聞きすることが増えたように思います。「移住」の定義は明確ではありませんが、一般的に「大都市出身者が地方に引っ越し定住すること(Iターン)」「地方出身者が故郷に戻って定住すること(Uターン)」を意味します。この移住に対して地方自治体が数多くの支援策を整えています。
もっとも有名なのが「地方創生移住支援事業」です。これは東京23区に在住または通勤をする人が、東京圏外へ移住して就職や起業する場合、都道府県・市町村が共同で交付金を支給する事業です。交付金は一世帯につき100万円。18歳未満の家族を帯同する場合は、一名につき100万円がさらに上乗せされます。もし18歳未満の子供が3人いる家族が移住した場合、交付金は400万円となる計算です(※自治体による)。ここまでの費用をかけて、なぜ地方移住を促進するのでしょうか。
この背景には首都圏への一極集中の問題があります。総務省による住民基本台帳に基づく2024年の人口移動報告によると、首都圏(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県)は転入者数が転出者数を上回り、13万5,843人の「転入超過」でした。2023年に比べて転入超過幅は9,328人拡大したとのこと。人口が減少していく日本において、首都圏だけが人口が増えている状態です。
一方で、地方自治体は人口が減り続けています。特に秋田県では1956年のおよそ135万人をピークに減少を続け、現在の人口は約90万人です。国立社会保障・人口問題研究所によると、秋田県は2050年までに現在の60%程度の56万人まで減ると予測されています。さらにその人口の半数が65歳以上の高齢者になります。秋田市以外のすべての市町村が「消滅可能性自治体」とされているほど人口減少が深刻になっています。
地方自治体にとって生産年齢人口(15歳以上~65歳未満)が減少すると、財政難に直結してしまいます。教育、福祉、消防・救急、ゴミ処理、除排雪といった行政サービスが持続できなくなり、さらに転出が増え、いずれ自治体は持続不可能に陥ります。その危機感から、地方自治体では特に首都圏からの移住促進に力を入れはじめているのです。