
高騰する東京都心のマンション価格
不動産経済研究所の調査によると、2024年の東京都23区内のマンション平均価格は1億1,181万円と前年より少し下がったものの、依然として一般的な会社員にとって非現実的な価格を維持しています。
原因としては、人件費と建材価格の高騰、海外の投資マネーの流入などが挙げられますが、同時に都心ではマンション用地の確保が困難であるという事情もあります。ディベロッパーとしては都心のブランド立地で高額物件を販売したいものの、開発できる用地が確保しづらい傾向が強まっています。
東京から千葉へ
そこで、都心と比較して地価の安い千葉県が注目されています。工業市場研究所発表の月別供給概要によると、2024年4月の千葉県の供給戸数シェアは、2002年以降最大の19.9%を記録。平均価格は5,831万円と、バブル期を超えて史上最高値を更新してはいるものの、東京都心よりもはるかに安い価格で手に入れることが可能です。
物件価格が軽く1億円を超える都心では、世帯年収が1,500万円~2,000万円におよぶパワーカップルであっても購入は難しいのが現実です。千葉県であれば、平均的な世帯年収の世帯でも予算の範囲になります。今後もマンション価格は高騰していくと思われ、全体的に将来の資産性について期待が持てるかもしれません。
地方都市の再開発ラッシュ
千葉県に限らず、東京都心以外の都市でタワーマンションが増加している背景には、「地方都市の再開発ラッシュ」があります。
1970年代までの高度成長期に整備された都市インフラは、50年以上が過ぎ老朽化が目立っています。地方都市の駅前には、時代遅れのバスターミナルや老朽化が著しい駅前広場が広がっていることが多いでしょう。空室だらけの古いビルや、木造の小さな飲食店が軒を連ねる狭い路地も目立ちます。衰退した地場産業の工場や問屋、市場などが巨大な空き家となっている街もあります。これらは交通の安全性や利便性、防災上の大問題があるのが現実であり、都市機能の衰退を招くため放置できない状況です。
そこで、市街地再開発事業が各地で行われるようになったのです。この再開発は、第一種事業(権利変換方式)と第二種市街地再開発事業(用地買収方式)のふたつに分類されます。近年の市街地再開発事業の多くは、用地買収ではない第一種事業です。
第一種事業の特徴は、地権者等による市街地再開発組合や再開発会社が主体となっていること。再開発を行うことによって得られる「容積率の規制緩和」が、再開発を担う企業や組合のメリットです。容積率の緩和によって、床面積を増やしてビルを建築することができ、増えた床面積(保留床)を販売することで再開発会社・組合は収益を得ることができます。
そして、その最もわかりやすいスキームが「タワーマンションの建築」です。東京都でさえ2030年に人口ピークを迎え、今後減少に転じていくと予測される時代において、すでに人口減少に突入しているにもかかわらず急速に増える「地方の駅前タワーマンション」には、このような背景があります。