「日本人は保険好き」とよく言われます。保険は一度加入すると、見直そうと思っても、「いまある保障よりも減ってしまう」という恐怖から、減額には心理的負担がかかります。そのため、契約時には本当に必要なものかどうか、シビアに判断することが重要です。本記事ではAさんの事例とともに、生命保険の必要性について長岡FP事務所代表の長岡理知氏が解説します。
恐ろしい…年収450万円、実家で70代母と二人暮らしの40代長男が「毎月12万円」支払っていた「ムダなもの」【FPが解説】 (※画像はイメージです/PIXTA)

そもそも生命保険は不要か?

生命保険(死亡保険や医療保険)には、本来、公的保障や職場独自の支援制度では補いきれないリスクをカバーするという目的があります。

 

医療保険の必要性

たとえば1ヵ月入院して、病院からの請求額が15万円だったとします。これを支払える貯蓄が15万円あれば、医療保険は不要です。会社員であれば有給休暇の制度があるため1ヵ月程度であれば給料は大きく下がりません。貯蓄が多少あれば、医療保険がなくとも1ヵ月の入院によるリスクは大きくないといえます。

 

ではもし、貯蓄がなかったら……。それでも病院に対して医療費を分割払いにしてもらう相談はできるため、さほど心配はありません。

 

退院後も就業できる体調ではなく、自宅で静養することになったらどうなるでしょうか。職場の健康保険から傷病手当金が支払われますが、その額は標準報酬月額の6割超で、さらにそこから社会保険料や住民税が差し引かれるため、手取りはもっと少なくなります。長期間仕事を休む場合には、この手取りが減少した分を補うために、やはり貯蓄が必要ということになります。

 

最近ではこの収入減を補填する目的で、医療保険に就業不能保障特約をオプションで付けられる保険商品もあります。しかしこちらも貯蓄で賄えるのであれば不要です。

 

こう考えていくと、医療保険が必要なのは、有給休暇や傷病手当の制度がない個人事業主です。しかしその場合も貯蓄で賄えるようにするのが優先であり、医療保険が必ずしも必要ではありません。

 

死亡保険の必要性

では死亡保険はどうでしょうか。死亡保険がなくても残された家族は生きていけるでしょうか。

 

会社員の場合、自分が亡くなると家族には遺族年金が支払われます。また住宅ローンがある場合には残債が0円になります。これに残された配偶者の収入が一定額以上あるのであれば、死亡保険は不要かもしれません。

 

ただし、遺族年金の金額が少ない場合や、配偶者が主婦/主夫である場合、障害などにより経済的な配慮が必要な子供がいる場合、住宅ローンの団信(団体信用生命保険)を夫婦で半分ずつ加入している場合など、死亡保険が必要になるケースもあります。

 

医療保険、死亡保険ともに自分が置かれた状況や考え方で必要性が異なります。

 

ガン保険の必要性

ガン治療では自由診療も積極的に選択したいというのであれば、貯蓄だけでは賄えないでしょう。その場合は、目的に合わせた医療保険の加入を検討してもいいかもしれません。しかし保障と引き換えに毎月の掛け金が必要ですので、「支出」という目線でもコストパフォーマンスを考慮すべきです。

 

年間の掛け金の平均37万1,000円は決して安くはありません。毎月3万円とすると当然ながら10年で360万円、20年で720万円です。これを3%で運用できたら20年後には987万円になる計算です。老後2,000万円問題の半分弱をこれだけで解決できるのですから、生命保険の掛け金にはもっとシビアになるべきです。