「日本人は保険好き」とよく言われます。保険は一度加入すると、見直そうと思っても、「いまある保障よりも減ってしまう」という恐怖から、減額には心理的負担がかかります。そのため、契約時には本当に必要なものかどうか、シビアに判断することが重要です。本記事ではAさんの事例とともに、生命保険の必要性について長岡FP事務所代表の長岡理知氏が解説します。
恐ろしい…年収450万円、実家で70代母と二人暮らしの40代長男が「毎月12万円」支払っていた「ムダなもの」【FPが解説】 (※画像はイメージです/PIXTA)

不安で不安で…生命保険に入りすぎる45歳独身男性

ここで「生命保険の入りすぎ」についての事例をご紹介します。

 

<事例>

 

Aさん 45歳 会社員
年収 450万円
未婚、パートナー・子供なし
実家に母親と二人暮らし
実家は戸建て(築42年)
貯蓄額 現金1,200万円
生命保険の掛け金 月12万8,000円

 

Aさんは未婚で45歳の会社員です。FPに相談したきっかけはAさんの友人からの紹介です。

 

友人のお話しでは「Aさんが保険に入りすぎていて生活が苦しそうだから説得して解約させてほしい」というものでした。

 

しかしいざ面談してみるとAさんがFPに告げたのはこうでした。

 

「私の保険で抜けている保障があれば教えて欲しい。見直しを検討したい」

 

もっと必要だと説得されたらさらに加入しそうな雰囲気です。Aさんの生命保険のラインナップは次のようなものでした。

 

医療保険(2社に加入)       月2万円
ドル建終身保険(65歳まで払込) 月3万円(為替で変動あり)
ドル建個人年金保険(60歳まで) 月2万円(為替で変動あり)
変額保険(定期タイプ)      月3万円
収入保障保険          月6,000円
就業不能保険          月3,500円
ガン保険(3社)         月8,500円

 

合計で毎月12万8,000円を支払っています。高額な医療保険を2社から加入していることや終身保険や変額保険など解約返戻金がある保険に毎月8万円を支払っていることと、年収が450万円であることを総合的に考えて、控えめにいっても異常な状態です。

 

「保険の内容はともかく、これで生活は成り立っていますか?」とFPは質問しますが、Aさんは実家暮らしで独身であることから、毎月さほどお金を使わないので支払える範囲内だと答えます。

 

なぜこんなに保険が必要なのかと質問すると、Aさんはさらに答えます。

 

「家族は母親だけなので、いずれ私ひとりになります。それで病気になったら不安で不安で。それに老後のことも考えると怖くなるんです」

 

そのため医療保険や、解約返戻金のある保険に入りすぎるのでしょう。

 

初めは、職場に毎日のように来ていた保険会社の営業職員からの勧誘がきっかけだったそうです。それを機に、Aさんは保険の重要性に気が付いたといいます。これらの契約の保険会社は全部で5社にわかれていて、担当者は5人います。この加入状況を5人の担当者がそれぞれ知っているのかとAさんに質問すると、全員に内容を見せているとのこと。それで「足りない保障はないか」と質問するので、その都度上乗せするようなのです。

 

「結論からいうと、保険の入りすぎです。抜けている保障はありません」FPがそう言うと、Aさんは聞いていないのかさらに言います。

 

「銀行に1,200万円寝かせているのですが、これも保険で運用すべきでしょうか。銀行に置いたままでは増えませんよね」

 

「いえ、必要ありません。もう保険はやめてください」