「日本人は保険好き」とよく言われます。保険は一度加入すると、見直そうと思っても、「いまある保障よりも減ってしまう」という恐怖から、減額には心理的負担がかかります。そのため、契約時には本当に必要なものかどうか、シビアに判断することが重要です。本記事ではAさんの事例とともに、生命保険の必要性について長岡FP事務所代表の長岡理知氏が解説します。
恐ろしい…年収450万円、実家で70代母と二人暮らしの40代長男が「毎月12万円」支払っていた「ムダなもの」【FPが解説】 (※画像はイメージです/PIXTA)

FPからの提案

70代の母親には貯蓄があり、死亡保険を残す必要はありません。貯蓄があるので当面の医療保険も不要でしょう。老後資金を貯めたいという思いで外貨建て保険や変額保険に加入しているようですが、ひとりの老後であれば現金を毎月貯めていくだけでも十分のはずです。資産運用をしたいと思うのであれば、まずはつみたてNISAを選んだほうがいいし、それすらごく少額で留めておくべきです。Aさんの状況ではリスクを負ってまで運用する必要性がないのです。

 

また、自宅は築42年で冬は寒く、押し入れなどの結露もひどいようです。このままではAさんの老後まで住み続けることは難しいのが現実です。ヒートショックなどの健康被害も考えられますし、大きな地震で倒壊する恐れもあります。

 

大規模にリノベーションするか、小さく建て替えるか、あるいはマンションを購入して転居するか、いずれかを決めるときが近々来るでしょう。その費用はいまのままでは支払えません。保険は抜本的に見直さなければなりません。

 

FPが見直しとして提示したのは、

 

・医療保険を一社だけ残す
・がん保険を一社だけ残す
・毎月の掛け金は8,000円程度
・それ以外はすべて解約し、普通預金での貯蓄に切り替える

 

というものでした。しかしAさんは、「それでは不安です! ありえません!」と強く抵抗を示します。「私は老後と病気が不安なんです。そのために保険を解約はしません」

 

Aさんとの相談会はあまり問題解決に結びつかずそこで終了しましたが、Aさんの友人の話によるとさらに貯蓄をつかって一時払いの生命保険に加入したとのこと。将来の人生設計を無視してまで生命保険に依存するのは、もしかしたら知識よりも心の問題のほうが大きいのかもしれません。

 

将来への不安感は誰しも持っているものですが、保険などの金融商品を購入すればすべてが解決されるわけではありません。不安を解消するために重要なのは将来を見据えたトータルな資金繰り計画です。
 

 

長岡 理知

長岡FP事務所

代表