いま非上場オーナー企業が企図すべきは〈フォロワー型経営〉からの脱却…「経営の自由度」を有効活用するための出発点は?【経営変革のプロが解説】

いま非上場オーナー企業が企図すべきは〈フォロワー型経営〉からの脱却…「経営の自由度」を有効活用するための出発点は?【経営変革のプロが解説】

業界・マーケットリーダーを模倣する「フォロワー型経営」は、昨今のような不確実性の高い時代に適したものとはいえません。とくに「経営の自由度」を最大の特長とする非上場オーナー企業は「フォロワー型経営」を採用すべきではなさそうです。本稿では、企業の経営変革を支援する株式会社TS&Co.の創業者兼代表取締役グループCEOである澤拓磨氏が、いくつかの経営類型について概観しながら、非上場オーナー企業が「フォロワー型経営」から脱却するためのポイントを解説します。

非上場オーナー企業がフォロワー型経営から脱却するための要諦

VUCAの時代においてフォロワー型経営を志向することは、非上場オーナー企業においても得策ではない。

 

それどころか、非上場オーナー企業の最大の特長である「経営の自由度(非上場のため株主からの株価上昇期待は相対的に低く、オーナー企業のため独断専行も選択肢として取りうる)」を有効活用するためには、フォロワー型経営からの脱却は急務といえるだろう。

 

では、非上場オーナー企業はフォロワー型経営からどのように脱却したら良いか?要諦に絞り解説する。

要諦1:「我々は何者か」の再発見

フォロワー型経営を採用する企業は「我々は何者か」を見失っている場合が多い。従って、非上場オーナー企業がフォロワー型経営から脱却するための出発点は「我々は何者か」を再発見することだ。

 

具体的には、過去・現在・未来の時間軸における経営評価と構想を行い、自社の実力・真価・アイデンティティ(らしさ・ならでは)を抽出することが重要だ。いまはフォロワー型経営を採用する企業も、創業期から同様の経営を志向していたのではなく、何らかのきっかけによりフォロワー型経営に行き着いているはずである。

 

従って、一度原点に立ち返り自社らしさ・ならではを探求していくことが求められる。認知バイアスを排除すべく、外部アドバイザーを起用して第三者視点を取り入れることも有効だろう。

 

要諦2:外部環境の変遷を見極めコア・コンピタンスと価値創造ストーリーの再発見

外部環境の変遷を見極めコア・コンピタンスと価値創造ストーリー(価値創造プロセス[事業を通じ資源・資本を交換・増減・変換するプロセス]にストーリー性を持たせ説明したもの)を発見する際は、過去・現在・未来の時間軸における政治・経済・社会・技術の各分野の変遷、変化の方向性、課題(需要)を把握する。

 

そして、外部環境の変化の方向性と課題に自社をケイパビリティ(戦略の源泉となる「希少」で「模倣困難[できない・やらない等]」な活動力。ベストを目指すことで強化される)と、ポジショニング(戦略の源泉となる「差別化」された事業の位置取りのこと。ユニークを目指すことで強化される)の2つの切り口で照らすことで自社固有のコア・コンピタンスを発見する。

 

最後に、どんな機会と脅威に発見したコア・コンピタンスを活用していくべきか検証し、価値創造モデル(インプット→プロセス→アウトプット→アウトカム→インパクト→トランスフォーメーションの流れを図式化したもの。事業ポートフォリオ戦略、サステナビリティ貢献、事業ビジョン*等の構想含む)や成功事例として形式知化しながら、価値創造ストーリーを再発見する。

 

*事業ビジョン……事業のあるべき姿。事業を通じた課題解決、世界の持続・Well-being(如何なる瞬間も完全に良好と感じられる状態)への貢献、世界になくてはならない等が事業ビジョンの必要条件。必要条件を満たす事業ビジョンはAspiration(志。利他+利己)と言われ、満たさぬ事業ビジョンはAmbition(野心・野望。利己)と言われる。

 

要諦3:事業ポートフォリオ戦略と参入事業の競争戦略の構想

事業ポートフォリオとは自社が所有・経営している事業群のことであり、一般的に、事業ビジョンの実現、全社企業価値最大化、リスク(不確実性)分散を目標に組成される。

 

事業ポートフォリオ戦略は、まず「事業ビジョン実現」「全社企業価値最大化」「リスク分散」の3つの切り口で現状の事業ポートフォリオを評価し、既存(コア・ノンコア)事業、シナジー創出事業、企業価値創造(ROIC>WACCとなる事業)・破壊(ROIC<WACCとなる事業)事業、コングロマリット・ディスカウント(プレミアム)創出事業、リスク分散効果創出事業等を炙り出す。

 

次に事業ビジョン実現、全社企業価値最大化、リスク分散を実現する事業ポートフォリオへの再編に向け、各事業領域に対する方針(成長投資、維持・自立、リストラクチャリング[分割・統合等]、縮小、再生、売却、撤退・清算、新規投資等)を固める。

 

これらの方針に基づき、最後に多角化を企図した成長戦略やリスク分散を企図したリスク最適化戦略(リスクの性質が異なる事業への新規投資)の実行等を検討するのだ。

 

この検討の結果定まった事業ポートフォリオ次第では、フォロワー型経営で模倣相手とみなしていた現参入事業における業界・マーケットリーダーは、今後模倣相手ではなくなる可能性もある。

 

そうなれば、新たに参入する事業に最適化された競争戦略をゼロベースで検討していくことで、フォロワー型経営から脱却できるだろう。

 

以上、非上場オーナー企業がフォロワー型経営から脱却するための要諦に絞り解説した。繰り返しになるが、VUCAの時代においてフォロワー型経営を志向することは得策ではない。

 

脱却後の理想像(リーダー型経営、チャレンジャー型経営、ニッチャー型経営のいずれか)については、要諦1~3を熟考することで、自ずと最適解を見いだせるはずだ。

 

必要に応じ、認知バイアスの排除や足りない経営知見等を充足すべく、外部アドバイザーも起用しながら、フォロワー型経営からの脱却を図りたい。

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