業界・マーケットリーダーを模倣する「フォロワー型経営」は、昨今のような不確実性の高い時代に適したものとはいえません。とくに「経営の自由度」を最大の特長とする非上場オーナー企業は「フォロワー型経営」を採用すべきではなさそうです。本稿では、企業の経営変革を支援する株式会社TS&Co.の創業者兼代表取締役グループCEOである澤拓磨氏が、いくつかの経営類型について概観しながら、非上場オーナー企業が「フォロワー型経営」から脱却するためのポイントを解説します。
フォロワー型経営はVUCAの時代と相性最悪。舵取りを放棄するな
「VUCA」の時代といわれて久しい。VUCAとは、Volatility(変動性)・Uncertainty(不確実性)・Complexity(複雑性)・Ambiguity(曖昧性)の頭文字を取った造語で、しばしば現在の経営環境をそう呼ぶ。
このVUCAの時代とフォロワー型経営は、相性が最悪だ。
前述の各競争ポジション別経営類型でみた通り、フォロワー型経営のみ受動的な経営(業界・マーケットリーダーの模倣を基本方針とし方向性を業界・マーケットリーダーの動向に、原則委ねる)なのだ。まさにこの点が、VUCAの時代とフォロワー型経営が相性最悪である所以だ。
VUCAの時代の経営は、業界・マーケットリーダーといえども、数多の失敗を経験しながら前進していくこととなる。そんななか受動的な経営を採用することは、Volatility(変動性)・Uncertainty(不確実性)・Complexity(複雑性)・Ambiguity(曖昧性)が常態化した経営環境における舵取りを放棄し航海していくことを意味する。
ここで注意しなければならないのは、業界・マーケットリーダーは仮に針路を誤ったとしても、高利益率、経営資源も多量・高質を誇る強者であり、多少の針路の誤りは痛くも痒くもないが、フォロワー型経営を採用する企業にとっては致命傷となり、たちまち窮地に陥りかねないことだ。
そして、窮地に陥った自社を救済してくれるプレイヤーは基本的には存在しない。なぜなら、フォロワー型経営を採用する企業は、参入している市場におけるシェアが低く、低利益率、経営資源は少量・低質と他プレイヤーに劣後する競争弱者であり、他競争ポジションにある企業からみて、たとえばM&Aの対象とはなりにくいからだ。