登場人物
森永康平…経済アナリスト。竹田と宮野に金利・為替の知識を教えてくれる。
竹田紗香…輸出企業である自動車部品メーカーに勤める会社員(20代)。出世のため仕事に打ち込む。
宮野聡…輸入企業である食品加工の企業に勤める会社員(20代)。住宅購入や投資を検討している。
2013年から始まった「質的・量的緩和」とは?
森永:金融政策は中央銀行が行う、物価を安定させるための施策です。特に、日本では2013年から行われた「質的・量的金融緩和」がよく知られています。
宮野:よくニュースでも目にする言葉ですよね。どんな話なんでしょうか?
森永:2013年までは日本銀行が金利を操作することで物価を調整していたのですが、2013年からは金利ではなくマネタリーベースを調整するようになりました。要は、市場にお金を大量に供給して好景気を呼び込もうということです。これを量的緩和と呼びます。
竹田:じゃあ質的緩和とは何ですか?
森永:買い入れる国債の期間を伸ばしたり、国債以外のETFといった資産も買い入れることです。日本は長い間デフレに陥っていたので、この政策によって実質金利を下げ、経済と物価を好転させ、デフレから脱却しようとしたのです。
日本銀行が長期金利を操作する「YCC」
森永:2013年から開始された質的・量的緩和に加えて、2016年9月からはYCC(イールドカーブ・コントロール)という政策が始まりました。ざっくりいうと、日本銀行が国債を大量に購入して、長期金利を抑える政策です。
竹田:国債を買うと長期金利は下がるのですか?
森永:その通りです。国債は、大量に買われるほど価格が上がり、金利が下がります。金利が上がりすぎると経済が停滞してしまうため、日本銀行が国債を大量に買い入れるようになったのです。
宮野:質的・量的緩和も国債を買う政策なんですよね。YCCとは何が違うんですか?
森永:量的緩和の目的は市場にお金を提供することで、購入額が決まっています。一方、YCCの目的は長期金利を抑えることです。日本銀行の定めた上限を長期金利が超えないように買い入れを続けます。
急な為替の変動が起きたときに介入する
森永:為替介入とは、為替の急激な変動を抑える取り組みです。例えば、急激に米ドル高円安が進んだとき、通貨当局は保有する米ドルを売ります。
宮野:米ドルを売って円が買われると、どうなるんでしたっけ?
森永:円がたくさん買われるということは、円の需要が増えているということ。つまり、為替が円高の方向に誘導されます。
宮野:なるほど! じゃあ、急な円高が進んだときは、反対に米ドルを買って円を売ればいいということですね。
竹田:日本銀行が為替介入をし続ければ、為替の相場も操作できるんですか?
森永:為替介入には大量の資金が必要ですし、強引に進めると相手国と軋轢が生まれかねません。アメリカでは20年間行われていませんし、日本で2022年9月に行われた為替介入も約10年ぶりでした。
イラスト ©平松慶
森永 康平
株式会社マネネCEO、経済アナリスト
※本記事は『0からわかる!金利&為替超入門』(ソシム)の一部を抜粋し、THE GOLD ONLINE編集部が本文を一部改変しております。
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