老後の住まいに対して、持ち家だろうと賃貸であろうと、不安を抱く人が多いようです。そんな不安を払拭する解決法のひとつが「老人ホーム」。看取り看護もOKというところであれば、最期まで安心して入居できるでしょう。しかし、その安心が100%とはいえないようです。みていきましょう。
終身契約のはずが…年金16万円の80代男性、1ヵ月の入院で「老人ホーム」から追い出された「まさかの理由」

妻を亡くした80代男性…終の棲家を求めて「老人ホーム」に入居したが

自宅での生活に不安を感じる高齢者。10年前に妻を亡くしたという80代男性もその一人。足を骨折したことを機に移動が不自由になり、外出機会がほとんどゼロに。下手をすると1日、誰とも口をきかない日が多くなっていくことに危機感を抱いていたといいます。

 

――このまま死んでも誰も見つけてくれないんだろうな

 

そんな不安から、自宅を手放し、老人ホームに入居することに決めたといいます。男性が決めたのは「看護師在籍」と高らかにうたう有料老人ホーム。看取り介護にも対応し、終の棲家として十分という点も気に入ったといいます。

 

費用に関しては、少々高め。入居一時金は1,500万円、月額利用料は月28万円。それに対し、男性の年金受給額は月16万円ほど。利用料外の費用を月2万円ほどとしても、月14万円は貯蓄を取り崩さなければ対応はできません。1年で170万円、10年で1,700万円の出費。入居一時金を合わせると、3,000万円ほどの余裕がほしいところです。そこでホームに入居後、しばらくしたら自宅を売却して、老人ホーム費用をまかなうことにしたといいます。

 

ホームへの入居後に自宅も売却でき、10年、さらにはそれ以上も入居できそうなほど予算的には余裕があったといいます。これでめでたし、めでたし……とならないのが、難しいところ。

 

男性は誤嚥性肺炎で1ヵ月ほど入院し、喀痰吸引が24時間必要に。退院後はホームに戻ることを希望しましたが、「いま、うちでは対応できなくて……」と、ホームを退去しなければならなくなったといいます。男性が入居したころは「看護師在住」と声高らかにうたっていたものの、その後、常駐の看護師が数名退職。欠員を補充できずに、現在、看護師がいるのは日中のみで、夜間は看護師は不在に。24時間喀痰吸引が必要な男性を看ることができないというのです。

 

――看取り看護対応で、終身利用が可能って聞いていたのに

 

そうは言っても24時間看護が不可能な施設に男性は戻ることはできません。結局、男性は老人ホームを退去し、病院で入院を続けているといいます。