60歳で定年退職、65歳で年金受給開始…無収入の空白期間を埋める「年金の繰上げ受給」
公的年金の受給開始は、原則65歳。一方で現在、多くの企業で「60歳定年」を採用しています。しかし定年を迎えた社員の8割が継続雇用を希望。契約社員や嘱託社員として再雇用されるなどして、60歳以降も働くのが、いまやスタンダードとなっています。
なぜ定年を迎えたにも関わらず、多くの人が働くことを希望するのか……その一因が「年金受給までの収入の空白期間を埋めるため」。前述の通り、年金受給は原則65歳から。60歳で定年を迎えてそのまま現役引退となると、年金受給開始までの5年間は無収入となります。その間は貯蓄がすごい勢いで減る一方。そんな状況を目の当たりにしたら、それだけでストレスが溜まりそうです。もしかしたら働かなくても十分なだけの貯蓄があるかもしれませんが、「無収入の期間に何かあったらどうしよう」「貯蓄が底を尽きたらどうしよう」などの不安から、「とりあえず現役続行」を選んでいる人が大勢いるのです。
そんな「年金受給までの収入の空白期間」に対する不安を解消できるかもしれないのが「年金の繰上げ受給」。これは原則として65歳から受け取ることができる老齢基礎・厚生年金を、希望すれば60歳から65歳になるまでの間に繰り上げて受け取ることができる制度。ただし、繰上げ受給の請求をした時点に応じて年金が減額され、その減額率は一生変わることはありません。また原則として老齢基礎年金と老齢厚生年金は同時に繰上げ請求をする必要があります。
繰上げにより減額される年金は、1ヵ月ごとに0.4%。60歳になってすぐに年金をもらったら、65歳で受け取るはずだった年金額の24.0%を減額されることになります。
厚生労働省『令和4年度厚生年金保険・国民年金事業の概況』によると、厚生年金保険(第1号)の老齢給付の受給者の平均年金月額は、併給の老齢基礎年金を含めて老齢年金が14万4,982円。65歳以上の受給権者に限ると、男性が16万7,388円、女性が10万9,165円でした。
仮に平均的な男性サラリーマン(65歳で月16万7,388円年金受給)だとすると、1年早く年金を受け取ると、15万9,353円、2年で15万1,318円、3年で14万3,284円、4年で13万5,249円、5年で12万7,214円になる計算です。