住宅価格が高騰するなか、できるだけ希望に近い住宅を購入するために「ペアローン」を利用する人も多いでしょう。しかしペアローンはリスクも大きく、失敗するケースも少なくはなく……。本記事ではAさん夫婦の事例とともに、「世帯年収」の違いによるペアローンのリスクについて長岡FP事務所代表の長岡理知氏が解説します。
世帯年収1,600万円の30代・パワーカップル…ペアローンで「1億円のタワマン」を購入した驚愕の結果【FPが解説】 (※画像はイメージです/PIXTA)

高価格帯のマンションは売れている

そしてご存じの方も多いと思いますが、マンションは現在も非常によく売れています。特に東京都心部のマンションは1億円を超えるなど高価格であるにもかかわらず、売れているのです。

 

マンション価格の高騰は戸建て住宅の比ではありません。国土交通省の「不動産価格指数」によると、2010年を基準として、2023年10月には193.9を記録しています。13年で価格が約2倍になったといえます。

 

1億円を超えるようなマンションを誰が買っているのかと思うかもしれません。とあるディベロッパーの資料によると、購入者は30代と60代が多いことがわかります。60代はなんとなく想像がつくとして、30代とは驚く方も多いでしょう。

 

住宅が高すぎるこのご時世で、億越えのタワーマンションを30代がなぜ買えるのか? 当然ながら自己資金と住宅ローンで購入するわけですが、その住宅ローンとは、ご存じの方も多い「ペアローン」です。

ぺアローンでの住宅購入が増えているが…

住宅価格が高騰する現在、ペアローンでの購入が一般的になっています。

 

ペアローンとは主に夫婦がそれぞれ住宅ローンを借りて、一軒の物件を購入する方法です。世帯主の単独債務よりも多額の融資を受けられるのが最大のメリットです。たとえば住宅ローンは、税込み年収の6倍~7倍くらいが借りられる金額の目安とされます(あくまでも目安で、実際は返済負担率や勤続年数、勤務先などの属性、信用情報で判断されます)。

 

年収600万円の会社員であれば4,200万円程度が限界ということになります。これでは理想の住宅を購入することは厳しいでしょう。そこでペアローンだとどうなるでしょうか。

 

夫の年収600万円、妻の年収600万円、世帯年収1,200万円だとしたら、8,400万円程度借りられる可能性があります。理想の住宅に近づくことができるでしょう。

 

もちろんペアローンにはデメリットも存在します。夫婦どちらかの年収が下がるととたんに返済が厳しくなります。また、離婚時は住宅を売却して清算するケースが多いです。それでも現実的にはペアローンでなければ購入できないのが現在の住宅価格です。

 

ペアローンは必ずしも悪いことではない

ペアローンと聞いただけで「そんなに無理して高い家を買うな」とか、「破綻の原因になる」などと否定する人は多いものです。

 

しかしながら、FPとして相談を受けていると、決して危険なケースばかりではないとわかります。計画的、戦略的にペアローンを活用し、資産性の高い住宅を手に入れる人たちも多くいます。

 

一方で、批判があるとおりペアローンのせいで生活が行き詰まる人達もいます。一言でペアローンといっても、利用する人の世帯年収によってはそのリスクはまったく違います。

 

・「1億円のマンションをペアローンで購入する」世帯年収1,600万円の家族

・「5,000万円の住宅をペアローンで購入する」世帯年収800万円の家族

 

どちらも世帯年収の7倍に相当する住宅ローンを借りていますが、この2つの家族では抱えるリスクの度合いがまったく異なります。実際のペアローン利用者の事例を簡単に紹介しながら、ペアローンを使ってはいけないケースを解説していきます。