建売住宅が売れなくなったワケ
2024年2月現在、住宅業界では静かに波乱が起きています。それは「建売住宅が売れなくなった」というもの。
コロナ禍初期までは好調だったものが2022年後半から異変が起き始め、業者は値引きをしてやっと売っている状態。中小規模の業者では新規の建設をストップしているケースも見られます。
売れなくなったのは建売だけではありません。戸建ての注文住宅もまた急ブレーキがかかっています。完成見学会などのイベントの来場客数が激減しているメーカーはめずらしくありません。
数百万円の広告費を打ったにもかかわらず、新規来場者は2人、しかも他社で契約済みだった……という悲惨な事態も耳にするほどです。中小メーカーの営業マンたちは新規の商談がないため契約も少なくなり、歩合給を稼げず転職を考えているという声も耳にします。
なぜこのような状況に陥ったのでしょうか。
業界でもいろいろな意見がありますが、ひとつにはご存じのとおりコロナ禍を要因とする住宅価格の高騰の影響があるのかもしれません。
建物の価格はここ10年のあいだで高くなっています。国土交通省の不動産価格指数によると、戸建て住宅は2010年を基準として115.6となっています。わずか15.6%と思うかもしれませんが、2,500万円の建物が2,890万円になったというイメージなので、決して見逃せない値上げ幅です。
合わせて住宅地の地価も上昇傾向であるため、消費者が目にする「資金計画書」の金額はこの数年でどんどん高くなっています。
地方の県庁所在地であれば「土地込み注文住宅」の資金計画は4,000万円では安いほう、5,000万円~7,000万円というものが目立っています。50代~60代の親世代が見たら「高すぎる!」と驚くような価格。
では購入者がローコスト住宅や格安な建売物件を選ぶのかというと、憧れている理想の家のイメージと建物の品質・グレード・デザインが乖離しているため、検討するモチベーションには繋がらないでしょう。格安の建売にありがちな立地の悪さ、土地の狭さ、ステータス性の低さも悪影響です。
住宅販売の不調には金融面にも原因があります。
ひとつが「フラット35(固定金利型住宅ローン)の金利上昇」です。フラット35はローン審査が通りにくい顧客層が利用する傾向がありました。しかし建物価格が上昇すると同時に金利もアップしてしまうと、もう低所得層には住宅購入は現実的ではありません。
建売住宅でも特に低価格帯の物件が売れなくなっていることにもその事情が現れています。これまで低価格の建売物件を買っていた低所得層がもはや買えなくなったと推測できます。
変動金利を選択するにしても、昨今の金利上昇圧力は強いものがあり、数十年後もいまの金利水準だとは誰も信じられなくなりました。
無理な住宅購入で家計破綻の危険がぬぐえず、いまはやめておこうかというところでしょうか。