日本の現状は、ハイパー・インフレーションに陥るリスクを秘めている
なぜこのような悲惨な事例をわざわざ取り上げたかというと、いまの日本の置かれている立場が、このハイパー・インフレーションのリスクを少なからず含有している可能性がゼロではないからです。
幸い日本の場合、他国からの借金も課せられた賠償金もありません。ましてや国の債務はすべて自国通貨建てですから、形式上、倒産する可能性はありません。
しかしインフレ時代に突入したにもかかわらず、いつまでも金融緩和が続き、相反するように税収が増えない事態が恒常化すれば、ハイパー・インフレーションのリスクが高まっていく可能性があります。
加えてここから日本の生産力が急速に悪化し、輸出が低迷する一方で、資源価格が高騰するなどして輸入が増加傾向を辿ると、海外への支払いが増え、これもまたハイパー・インフレーションのリスクが高まる要因となります。
ただでさえ日本の財政赤字がすでに天文学的な数字に増え、さらにその金額の半分以上を現在は日本銀行が保有している(形式的には半分以上が財政ファイナンスされている形です)のですから、日本滅亡論者が気勢を上げるのも無理のない話です。
日本でハイパー・インフレーションが起こった時は、金融機政策より国家経営に問題アリ
ただ、幸いなことに、インフレ時代が始まってから日本の税収は順調すぎるほどの勢いで増え続けています。インフレ時代に入ったことで、名目成長率が実質成長率を上回り、これまでよりも高い税収の伸びが確認されています(税収は名目成長に連動して増減します)。
また、ここのところ貿易収支は輸入超過の状態が続いていますが、日本の対外純資産残高は2022年末の時点で419兆円もあり、毎年増加傾向にあります。
ちなみに政府の外貨準備は2022年末現在で162兆円となっています。さしあたりインフレの時代に入ったからといって、これが歴史上起きたハイパー・インフレーションに変異するリスクに怯える必要はなさそうです。
もちろん、これから日本の人口がどんどん減少したり、かつてないほどの天災が日本を襲ったり、さらには資源価格が急騰したりといった、日本を様々な不幸が襲うシナリオが描けないわけではありません。
しかしその発生確率が何%かといえば、そんなものは計算できるものではありません。
唯一、まともな悲観シナリオを考えるとすれば、それは大きな軍事的緊張が高まり、日本における防衛費が急増し、さらにその費用のほとんどが諸外国への支払いを義務付けられるケースでしょう。
安全保障を諸外国に丸投げし、その支払いに税収が追い付かない事態となるなかで、国力が衰退の一途を辿る事態となれば、日本にハイパー・インフレーションが起こる可能性は高まります。
あくまで仮定の話ですが、いずれにせよこうした不測の事態が起こるとすれば、それは金融政策が要因ではなく、国家経営に問題がある場合であることを覚えておいてください。
【関連記事】
■税務調査官「出身はどちらですか?」の真意…税務調査で“やり手の調査官”が聞いてくる「3つの質問」【税理士が解説】
■月22万円もらえるはずが…65歳・元会社員夫婦「年金ルール」知らず、想定外の年金減額「何かの間違いでは?」
■「もはや無法地帯」2億円・港区の超高級タワマンで起きている異変…世帯年収2000万円の男性が〈豊洲タワマンからの転居〉を大後悔するワケ
■「NISAで1,300万円消えた…。」銀行員のアドバイスで、退職金運用を始めた“年金25万円の60代夫婦”…年金に上乗せでゆとりの老後のはずが、一転、破産危機【FPが解説】
■「銀行員の助言どおり、祖母から年100万円ずつ生前贈与を受けました」→税務調査官「これは贈与になりません」…否認されないための4つのポイント【税理士が解説】