Q. 退職金割増の早期退職の募集に、応募するのはトクな選択か?
⇒A. 転職でステップアップできそうならおトク、そうでないなら見送りを!
定年を待たずに退職することで、割増された退職金を受け取ることができるのが早期退職です。業績悪化や事業縮小による人員削減を目的とするケースが大半ですが、そこまで深刻な事情がなくても組織の若返りのために実施する企業もあります。
早期退職のメリットは、なんといっても退職金を規定よりも多く受け取れることです。また、離職の理由が自己都合ではなく会社都合となるため、失業給付を受給する際の扱いも有利です。退職する前の賃金をもとに1日あたりの金額が計算される失業給付の「基本手当」は、自己都合退職であれば受けるまでに2ヵ月待つ必要がありますが、会社都合であれば7日の待機で受け取ることができます。受給できる日数も会社都合であれば最長で330日分と、自己都合の150日分を上まわります。転職活動をする際も、「希望退職に応募した」というのは前職の離職理由としても説明しやすいでしょう。
【要注意】早期退職後の再就職は簡単ではない
ただし、生涯得られる収入は退職金の割り増しと失業給付の額を足し合わせたとしても、定年まで勤め上げ、その後も再雇用で働き続けるほうが大きくなることが大半です。
たとえ退職金が1000万円上乗せされたとしても、年収500万円の人が55歳で早期退職すれば5年分2500万円の収入を失います。さらに、同じ会社で60歳以降に働き続ける権利も放棄することになるので、そのダメージはきわめて大きいのです。
しかも、そのままリタイアとなれば厚生年金に加入する期間が短くなるので、老後に受け取る年金が減るデメリットもあります。
前職と同じ待遇で転職できれば退職金の割増分が儲かることになりますが、現実として早期退職の対象となる世代が年収を大きく落とさずに転職できるケースはそれほど多くありません。
もともと、転職や独立を真剣に考えていて、そんなときにちょうど早期退職の募集があったという場合のほか、需要の高いスキルを持っていて転職先に不自由しないような人であれば早期退職はとても有利な選択肢です。一方、そうでない場合は目の前の割増退職金に釣られて退職を選ぶのはリスクが高いといえます。
<ポイント>
●割増退職金と失う収入のバランスなどを、慎重に検討しましょう
森田 悦子
日本FP協会認定AFP(ファイナンシャルプランナー)
石川県生まれ。金沢大学法学部を卒業後、地方新聞記者、編集プロダクションを経て独立。主な執筆分野は資産運用、年金、社会保障、金融経済、ビジネス。新聞、雑誌、ウェブメディアなどで取材記事やインタビュー、コラム、ルポルタージュを寄稿。共著に『NISA&つみたてNISAで何を買っていますか?』、『500円で入門 今からはじめる株投資』(以上、standards)など。
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