12月『景気ウォッチャー調査』、現状判断DIは5ヵ月ぶり改善
~「地震or震災」コメントは5ヵ月連続、現状判断・先行き判断ともゼロ。警戒感が薄れていたところに、元日の能登半島地震発生。その影響は次回1月調査にて判明する
12月の『景気ウォッチャー調査』では、現状判断DI(季節調整値)は50.7と、前月差1.2ポイント上昇、5ヵ月ぶりに改善になり、4ヵ月ぶりに景気判断の分岐点50を上回りました。
家計動向関連DIは、家計動向関連DIは、サービス関連の前月差1.3ポイントをはじめ各主要項目が上昇し、全体として0.6ポイント上昇の50.7と2ヵ月連続50超になりました。企業動向関連DIは、製造業、非製造業とも前月から上昇し、前月から2.7ポイント上昇の50.7になりました。雇用関連DIは前月から1.5ポイント上昇し50.2になりました。一方、12月の先行き判断DI(季節調整値)は前月差0.3ポイント低下の49.1となりました。
内閣府は、『景気ウォッチャー調査』の現状判断を5月から8月までは「緩やかに回復している」としてきましたが、9月で「緩やかな回復基調が続いているものの、一服感がみられる」に、22年7月以来14ヵ月ぶりに下方修正しました。但し、先行きの判断は「先行きについては、価格上昇の影響等を懸念しつつも、緩やかな回復が続くとみている。」に据え置きでした。
12月の調査結果に示された景気ウォッチャーの見方は、「景気は、緩やかな回復基調が続いているものの、一服感がみられる。先行きについては、価格上昇の影響等を懸念しつつも、緩やかな回復が続くとみている。」と、9月以降4ヵ月連続して同じ判断になりました。
12月の回答者数は2,050名中1,781人で1,800人割れ、回答率は86.9%と、景気ウォッチャー調査としては少なめでした。通常回答率が高い北陸ですが100人中、81人にとどまりました。11月調査では88人でした。想像の域を出ませんが、年初になってから年末の回答を送ろうとしていた景気ウォッチャーの中で地震によって送れなかった人がいたのかもしれません。
23年は年間を通じて「地震or震災」のコメントは極めて少なく、とりわけ8月調査から直近の12月調査にかけては5回連続で現状判断・先行き判断ともゼロでした。23年は台風などの発生数・上陸数も少なく、自然災害に対して安心していたところ、24年は元日に能登半島地震が発生してしまいました。能登半島地震の影響は1月調査から反映されることになります。
新型コロナウイルスの「景況感への影響力」はさらに小さく
~「新型コロナウイルス」関連判断DI、現状も先行きも景気判断の分岐点50を上回るが、コメント数は低下が続き、景況感への影響力は小さい
12月の『景気ウォッチャー調査』で、「新型コロナウイルス」関連判断は、現状判断で61人がコメントしDIを作ると61.0と景気判断の分岐点50を上回る水準です。先行き判断で「新型コロナウイルス」関連のコメントは58人で、関連DIは59.1になりました。
コロナ禍が始まったばかりの2020年2月・3月には先行き判断で1,000名を超えるウォッチャーがコメントし、DIが50を大きく下回っていましたが、先行き判断のコメント数が23年10月に初めて83名と2ケタに低下し、11月で75名、12月で58名とさらに少なくなりました。「新型コロナウイルス」は景況感に大きく影響を与える材料ではなくなっています。
物価高の景況感悪化寄与度はやや弱まる
~12月「価格or物価」関連判断DIは、現状も先行きも景気判断の分岐点50を下回り景況感の足を引っ張るが、物価の落ち着きを反映し、マイナス寄与度はやや小さくなった
12月の『景気ウォッチャー調査』で、景況感の足を引き続き引っ張った悪材料として目を引くのは11月に続き「価格or物価」関連の判断です。現状判断で172人がコメントしDIを作ると45.8で、213人がコメントし43.5だった11月から41人回答数が減りDIは2.3ポイント上昇しました。景気判断の分岐点50を下回る水準が続いていますが、物価が落ち着いてきたこともあってマイナス寄与度はやや小さくなったように思われます。
先行き判断で「価格or物価」関連のコメントは273人で、関連DIは43.4です。こちらは、318人で関連DIは42.8だった11月から45人回答数が減りDIは0.6ポイント上昇しました。但し、景気判断の分岐点50を下回っています。総じてみると、「価格or物価」関連は影響度が小さくなりつつも、依然として景況感にマイナスの影響を与えている項目と考えられます。
インバウンドは引き続き「下支え要因」に
~12月の「外国人orインバウンド」関連DI、現状判断DI、先行き判断DIとも60台
12月の『景気ウォッチャー調査』で、「外国人orインバウンド」関連の現状判断DIは63.1と、11月の64.5から低下したものの、22年9月以降16ヵ月連続して景気判断の分岐点50を大きく上回る60台or70台の高水準で推移しています。
一方、先行き判断で「外国人orインバウンド」関連DIは、49.9と22年4月の46.9以来18ヵ月ぶりの50割れになった10月から、上昇に転じ、11月58.1、12月60.4と改善してきました。
なお、「外国人orインバウンド」関連のコメント数は、新型コロナウイルスが流行していて外国人の入国が規制されていた時期は極めて少ない状況で、外国人orインバウンド」関連のコメント数は、21年9月・10月は1人だけでした。23年6月から11月の6ヵ月は70人台・80人台の高水準でした。12月は65と5月以来7ヵ月ぶりに60台に低下しました。
景気ウォッチャーは「減税」に期待していない状況
~「政治」「減税」などの先行き関連判断DIから感じられる、景気ウォッチャーの厳しい見方
「政治」「減税」などに対し、12月の先行き関連判断DIからみると、11月に続いて景気ウォッチャーの厳しい見方が感じられます。
12月に「政治」先行き関連についてコメントした景気ウォッチャーが25名で3名だった11月から大きく増えました。「政治」先行き関連判断DIは40.0になり、11月の41.7を下回りました。
通常は景況感のプラスに作用するはずの「減税」に関してコメントした4人で11月の14人から減少し、「減税」先行き関連判断DIは50.0で、11月の44.6を上回りましたが、景気判断の分岐点50.0を超えられませんでした。景気ウォッチャーは「減税」に期待していない状況であることがわかります。
なお、16人が回答した12月の「金利」関連先行き判断DIは46.9で、14人が回答し37.5だった11月から上昇しましたが、景気判断の分岐点50を下回っています。
※本投稿は情報提供を目的としており、金融取引などを提案するものではありません。
宅森 昭吉(景気探検家・エコノミスト)
三井銀行で東京支店勤務後エコノミスト業務。 さくら証券発足時にチーフエコノミスト。さくら投信投資顧問、三井住友アセットマネジメント、三井住友DSアセットマネジメントでもチーフエコノミスト。 23年4月からフリー。景気探検家として活動。 現在、ESPフォーキャスト調査委員会委員等。
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