学校を卒業してから40年あまり。サラリーマンとして区切りとなる定年。企業によって60歳であったり、65歳であったりとさまざまですが、「定年の1ヵ月前に退職すると得する」というアドバイスをするお金のプロも。どういうことなのでしょうか。みていきましょう。
浅はかでした…月収43万円・59歳のサラリーマン「59歳11ヵ月の退職がお得」と聞いて定年前に退職を決意も、思わぬ〈落とし穴〉に涙目

60歳定年で1,700万円の退職金がもらえそう…でも1ヵ月前に辞めるのがベスト?

厚生労働省『令和4年 賃金構造基本統計調査』によると、59歳サラリーマン(正社員)の平均給与は43.1万円、賞与も含めた年収で701.6万円。定年退職金は「(直近)月収の40ヵ月分」が平均といわれているので、1,700万円程度を手にする計算でしょうか。

 

そんな皮算用をしているなか、定年前にこんなアドバイスを聞くことがあります。

 

――退職するなら「59歳11ヵ月」がベストタイミング

 

どういうことなのでしょうか。そのカギを握るのが「失業保険」です。

 

「59歳11ヵ月の退職がお得」だと言われるワケ

雇用保険の被保険者が離職し、新しい仕事を探す間の生活を支えるために支給される失業手当。受け取れる日数と支給額は、離職日の年齢と雇用保険の被保険者だった期間、離職の理由によって決定します。

 

失業手当の1日当たりの支給額である「基本手当日額」は、原則、離職した日の直前の6ヵ月に毎月支払われた賞与を除く賃金の合計を180日で割って算出した金額に対し、60歳未満であれば50~80%、60歳~64歳は45~80%となります。

 

雇用保険の被保険者期間が20年以上の場合、59歳で「自己都合退職」だと、所定給付日数は150日で、基本手当日額の上限は8,490円。倒産や解雇、会社が希望退職を募った場合の「会社都合退職」だと所定給付日数は330日で、基本手当日額の上限は8,490円です。対して60歳で「定年退職」であれば、所定給付日数は150日で、基本手当日額の上限は7,294円です。

 

つまり「59歳11ヵ月で会社都合で退職」、または「59歳11ヵ月で基本手当日額が7,294円以上」であれば「失業保険が多くもらえる」可能性があるというわけです。

 

65歳が定年退職なら「64歳11ヵ月の退職がベストタイミング」

60歳定年であれば「59歳11ヵ月の退職がベストタイミング」といわれるように、65歳定年であれば「64歳11ヵ月の退職がベストタイミング」といわれます。

 

失業手当が受け取れるのは64歳までで、65歳からは「高年齢求職者給付金」がもらえるようになります。失業手当は被保険者期間が20年以上、60~65歳未満で、自己都合退社なら150日、会社都合退職なら240日が最大給付日数。それに対し、「高年齢求職者給付金」は30日、または50日分。つまり失業保険をもらうほうがメリットが大きいというわけです。

 

さらに特別支給の老齢厚生年金や、老齢年金の繰上げ受給の兼ね合いから、「退職するなら64歳11カ月がベスト」といわれています。