学校を卒業してから40年あまり。サラリーマンとして区切りとなる定年。企業によって60歳であったり、65歳であったりとさまざまですが、「定年の1ヵ月前に退職すると得する」というアドバイスをするお金のプロも。どういうことなのでしょうか。みていきましょう。
浅はかでした…月収43万円・59歳のサラリーマン「59歳11ヵ月の退職がお得」と聞いて定年前に退職を決意も、思わぬ〈落とし穴〉に涙目

「定年退職1ヵ月前に辞めるのがお得」の落とし穴

60歳定年なら59歳11ヵ月で、65歳定年なら64歳11ヵ月と、定年の1ヵ月前に辞めるのがベストタイミングというお得情報。ただし法律では誕生日の前日に年齢が上がるというのがルール。「59歳/64歳」で退職したとするなら、誕生日の前々日までに退職しなければ、「60歳/65歳」で退職となってしまいます。

 

また基本的に自己都合による退職の場合、2~3ヵ月の給付制限期間があり、この間は失業手当は給付されません。

 

さらに会社によって退職金の規定は異なります。「59歳/64歳の退職」と「60歳/65歳の定年退職」では、退職金に差が生じることも珍しくありません。失業保険給付だけにこだわっていると、結果的に損をする可能性も。

 

そもそも失業保険は「雇用保険に加入し保険料を支払っていること」「離職の日以前2年間に12ヵ月以上の雇用保険の被保険者期間があること」「就労の意志と能力があり、求職活動を行っていること」が給付条件。つまり「60歳で/65歳で現役を辞める」と考えている人や、「この先も働くけど、(定年)退職したら、少しゆっくりしたいなぁ」という人は、「59歳11ヵ月/64歳11ヵ月の退職がベスト」の対象外です。

 

――60歳定年なら1ヵ月前に辞めるとお得ですよ

――そうなんだ、わかった!

 

“お得”の言葉だけで退職時期を決めた結果、「あまりに、浅はかでした……」と涙目になっても後の祭りです。定年退職1ヵ月前の退職で総合的に得となるのか、損となるのか、定年後のキャリアも含めて、綿密なシミュレーションのもと検討することが重要です。

 

[参考資料]

厚生労働省『令和4年 就労条件総合調査』

厚生労働省『雇用保険の基本手当日額が変更になります ~令和5年8月1日から~』

厚生労働省『令和4年 賃金構造基本統計調査』