製薬会社勤務のサラリーマン…60歳定年を機に「給与5割減」
大手製薬会社で働く、内藤誠一さん(仮名・60歳)。60歳で定年を迎え、契約社員として新しいサラリーマン生活がスタートしました。定年後に迎える、初めての給料日。振込額をみて思わず言葉を失ったといいます。
――27万6,000円
額面で36万円ほどだった月収は、税金やら保険料やら引かれて、その金額に。
――この金額……30代前半くらいだったかな。60歳から30年ほどタイムスリップした感じですね
自虐的に笑うしかなかったといいます。定年まで、課長職だったという内藤さん。月収は70万円ほどだったというので、給与は5割減。定年とともに役職手当がなくなり、さらに正社員から非正規社員になったことで、大きく給与が減ることになりました。
厚生労働省『令和5年賃金構造基本統計調査』によると、50代後半の大卒サラリーマン、非役職者の平均月収は37.5万円。係長級だと44.1万円、課長級で57.6万円、部長級で70.4万円です。一方、60代前半の大卒サラリーマン、非正規社員の月収は33.7万円。非役職者であれば、定年を機に大幅な給与ダウンはありませんが、定年間近というと、多くが役職者。ランクが上であればあるほど、給与の減額幅が大きくなります。また基本給と役職手当のバランスは会社によって異なりますが、役職手当の比率が高い会社では減額幅も大きくなり、7割減、8割減というケースもあるようです。
ちなみに50代後半のサラリーマン(正社員)の平均月収は43.5万円。そして60代前半の非正規社員の平均月収は28.5万円。減額率は35%ほど。いわゆる「60歳の壁」。これが平均値です。
この給与減が、定年後の労働意欲を低下させると問題に。確かに内藤さんのように、急に30年前の若手サラリーマン時代の給与に逆戻りとなると、その変化からモチベーションが下がるのも無理がありません。
最近では三菱UFJ銀行は2025年度から、60歳の定年退職後に再雇用となった行員の給与を最大で4割上げることを決定するなど、再雇用社員のモチベーションアップを目指す企業も。しかし、まだまだ少数派で多くの再雇用サラリーマンは「こんなに会社に尽くしてきたのに……」といいながら、「60歳の壁」に落ちていくしかない状況です。