平均寿命が延びるなか、高齢になってから結婚の話が出るというケースもあるようです。一度目の結婚であれば、当事者間だけの問題かもしれませんが、さまざまなライフステージを経たあとの結婚の場合、家族を巻き込んだトラブルに発展してしまうことも……。本記事では、Aさん事例とともに、高齢の親の再婚によって想定される「相続トラブル」について、CFPの伊藤貴徳氏が解説します。
「一緒のお墓に入ろう」人生最後の愛を勝ち取った年金月22万円の78歳・おひとりさま男性…幸せな余生が一転、苛烈な〈老人ホーム〉での三角関係の末路【CFPが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

再婚すると相続はどうなる? 

結婚や再婚などで婚姻関係となると、配偶者は「法定相続人」となり、常に相続人となります。 

 

たとえば、AさんとBさんが入籍し婚姻関係となったあとに、Aさんが亡くなった場合、Bさんは相続人となりAさんの相続財産を相続する権利が生まれます。 Aさんには2人の子がいますから、Bさんの法定相続分は相続財産の1/2となります (2人の子は残りの1/2を2等分するため1/4ずつとなる) 。つまり、Bさんが配偶者となると、Aさんが死亡したときにBさんにも相続分が発生するということになります。 

 

Aさんの息子2人は、Aさんが老人ホームに入所するときにこんな相談をしていました。 

 

「親父の老人ホーム用にとってある預金もそうだけど、自宅をどちらが受け継ぐかという問題もある。ここは長男の俺が家を受け継ぎ、その評価額に見合った相続財産を次男が受け継ぐことをあらかじめ2人のあいだで取り決めて、相続があったときでも円満に手続きできるようにしておこう」 

 

Aさんの長男は、Bさんが配偶者となり相続分が発生することで2人で相談して考えてきた相続プランが振り出しに戻ることを気にしているのでした。それどころか、長男と次男はBさんが相続に絡んでくることで、自身の相続分が大きく減ってしまうのです。

 

たとえ父親が「遺産は子どもたちに」と配偶者に相続させないよう遺言書を残したとしても、法律で定められている遺留分という最低限の権利は侵害することができません。こうした理由により、息子らは高齢の父の意向に、到底納得してやることはできません。

 

長男の大きな誤算 

Bさんとの再婚によりBさんが法定相続人の最優先順位者となる 

相続財産の分割割合に変化が生じる 

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兄弟でトラブルなく相続手続きできるように取り決めておいた計画が崩壊 

 

Bさんの家族も同様、Aさんの結婚について驚きを隠せないようでした。相続についてはAさんの家族ほどしっかりと考えてはいなかったものの、心情的に受け入れることができない理由がありました。