Bさん家族のお墓問題
「いまさら、別の人と再婚なんて!」
Bさんには、3人の娘がいます。彼女たちは、先立った父のことが大好きで、忘れられずにいました。現役時代は忙しく仕事をこなす傍ら、休日には家庭との時間もしっかり作って、娘3人を無事大学まで進学させてくれた父を尊敬していました。3人とも結婚して独立し、それぞれに孫が生まれましたが、その成長を一緒に楽しむことも叶わず3年前に亡くなったのでした。
「再婚して、お父さんのお墓はどうなるの? 再婚者のお墓に一緒に入る約束をするなんて。そんなこと、お父さんがあまりに不憫よ! だいたい、お相手の先に亡くなった奥さんと3人のお墓なんて……もう、めちゃくちゃじゃない! お墓のなかで一人のおじいさんをめぐって前妻と喧嘩することになるわよ! お母さんは本当にそれでいいの?」
お墓問題は相続財産とは違った、気持ちの問題が強いものです。特に生前お世話になった故人が再婚者によって扱いが変わるようなことがあれば、残されたご家族には、故人が虐げられたと捉えられかねません。 Aさんの息子達とBさんの娘達は集まり、親の結婚について相談することにします。
折衷案を打診も…
Aさんの息子達、Bさんの娘達で話し合ったところ、お互いに親同士の恋愛自体には賛成の考えなのですが、それを取り巻く周辺状況がなかなか受け入れ難いものとなっているようでした。
Aさん息子達は相続問題。Bさん娘達はお墓問題。 この問題を解決するためには、「籍を入れない事実婚としてもらう」という結論に至りました。
事実婚であれば、内縁の妻には相続分は発生しません。お墓についても、血縁者でなければ同じ墓に入れないとする霊園もあります。
「一生に一度の人生だから、お互いがお互いを大事に思っているのであれば、最大限尊重してあげたい。ただ、もし今後2人に万が一のことがあったとき、籍を入れていることで、残された家族に金銭的、精神的な負担となることが増えるようであれば、籍を入れない事実婚でお願いしたい」という折衷案をAさんとBさんに提案しました。
人生最期の愛を深く結ぶため、「結婚」という形を望んでいたAさんとBさんは、息子、娘からの提案をどうしても納得できません。話し合いはどうしても折り合いが付かず、結局、この日を境にAさんもBさんも子どもたちとは疎遠になってしまうのでした。
ライフステージが進んだあとの結婚は、取り巻く環境によっては障壁が生まれるケースもあります。ただ、祝福したいという気持ちが伝われば、うまくいくケースもあるでしょう。 周りからの祝福や承認で、2人の関係を認めてあげるということも大切のように思います。
伊藤 貴徳
伊藤FPオフィス
代表