恋愛感情を巧みに利用する「国際ロマンス詐欺」
インターネット詐欺とは、インターネットを通じて行われる詐欺行為の総称を言います。
インターネットが持つ匿名性や手軽さを悪用した形で行われており、巧妙な手段で個人情報を取得して、個人が持つアカウントに不正アクセスしたり、架空請求によって金銭を振り込ませようとするなどの手口が挙げられます。
現在は、スマートフォンの普及も進んでいるため、パソコンだけでなくスマートフォンを利用しても詐欺が行われているので注意が必要です。
本稿では近年多くなっている詐欺の一つ、「国際ロマンス詐欺」について説明します。
令和では「マッチングアプリで標的を漁る」というタチの悪さも
国際ロマンス詐欺とは、出会い系サイトやマッチングアプリ、SNSなどインターネット上の交流サービスを通じて外国人をかたる人物と知り合い、恋愛関係にあると錯覚させられ、一度も会わないまま多額の金銭を騙し取られるという詐欺のことです。「一度も会わないまま」というのは恋愛感情を巧みに使っているからこそ、なせる業かもしれません。
詐欺師は外国人であるケースもあれば日本人であるケースもありますが、外国人として振る舞うことから「国際ロマンス詐欺」と呼ばれています。
私は、2022年、マッチングアプリ大手運営会社の「詐欺防止に関わる有識者会議委員」に選ばれ、詐欺防止について検討した経験もありますが、マッチングアプリからの出会いで詐欺被害に遭うことも多くなっているので利用者は特に注意が必要です。
事例と手口
●詐欺師が戦場や出張先から、大金の入ったアタッシュケースや高価なプレゼントなど架空の贈り物を被害者に「送る」「送った」と言ってくる手口です。さまざまな事情から税関などで荷物が止まり、税関スタッフや配送会社を装った詐欺の共犯者からの連絡によって手数料や罰金、保険料などを請求されます。
●仕事の「休暇、退役、任務短縮」を利用する手口です。戦場で仕事をする軍人、医師、ジャーナリストを名乗る詐欺師がよく使いますが、休暇、退役、任務短縮の手続きをするための費用、交通費、埋め合わせ要因の給料などを請求されます。
●自らの子どもに関する費用の請求をする手口です。詐欺師はシングルファザー(もしくはシングルマザー)を装い、故郷などに残した子どもの学費、医療費、生活費、誕生日プレゼントとして、現金やパソコン、スマートフォンを要求します。子ども役の詐欺師が登場し、被害者とメールや電話でやり取りをして被害者を信用させるなど巧妙に仕組まれています。
いずれのケースも支払ったお金は戻らず、騙されたことに気づくというパターンです。
防止策
【相手の写真やアドレスをネットで検索する】
一般的に詐欺師は、外国人の美男・美女の顔写真をプロフィールに掲載しています。しかし、その写真は偽物であり、ネットで拾った他人の写真です。ターゲットに恋愛感情を抱かせるために、美男・美女の顔写真を無断で転載しているのです。ネットの画像検索で調べれば、まったく別人の顔写真であることが判明することもあります。
また、相手のアドレスなどの情報をネットで検索すれば、「詐欺師」であることが判明することもありますし、既に騙された人が注意を呼びかけて投稿している場合もあります。
まずは、可能な限り相手の情報をネット検索して正体を探ることが重要です。
【会ったことがない相手に送金をしない】
ネットで他人と交流する場合には、「会ったことがない相手に送金はしない」と決めておいたほうが良いです。
冷静に考えれば、まだ会ってもいない相手から多額のお金を要求されることが、いかに怪しいことであるかがわかるはずです。
これはどんな詐欺でも言えることですが、会う前でも後でも相手から「お金の話」が出てきたら「詐欺」を疑わないといけません。
【送金する前に第三者に相談する】
恋愛感情になってしまうとまさに「恋は盲目」です。心を奪われているため正常な判断が難しくなってきます。
そこで、多額のお金を送金する前に家族や友人などに相談してみましょう。相談者は「信頼できる人」がベストです。恋愛感情になってしまった以上、信頼できる人でないと素直に意見を受け入れられないからです。
そして「それはおかしい」「詐欺かもしれない」といった冷静なアドバイスを受けたら、いったん送金はやめます。時間をおいて冷静に考えれば、詐欺ということに気づくことができると思います。
森 透匡(もり ゆきまさ)
一般社団法人日本刑事技術協会 代表理事
国税庁税務大学校、財務省税関研修所 研修講師
経営者の「人の悩み」解決コンサルタント
警察の元警部。詐欺、横領、贈収賄事件等を扱う知能・経済犯担当の刑事を約20年経験。東日本大震災を契機に独立し、刑事が職務上体得したスキル、知識を用いてビジネスの発展と社会生活の向上に寄与することを目的とし、一般社団法人日本刑事技術協会を設立。現在は代表理事として「ウソや人間心理の見抜き方」を主なテーマに大手企業、経営者団体など毎年全国180ヵ所以上で講演・企業研修を行う。マッチングアプリ大手運営会社の詐欺防止に関わる有識者会議委員、『高齢者を身近な危険から守る本』(池田書店)の監修など、幅広く活動している。
TBS「ビビット」、日本テレビ「月曜から夜ふかし」、読売新聞、日経新聞などメディアへの出演、掲載も多数。著書に『元知能犯担当刑事が教える ウソや隠し事を暴く全技術』(日本実業出版社)、『刑事(デカ)メンタル』(ダイヤモンド社)など。
【関連記事】
■税務調査官「出身はどちらですか?」の真意…税務調査で“やり手の調査官”が聞いてくる「3つの質問」【税理士が解説】
■月22万円もらえるはずが…65歳・元会社員夫婦「年金ルール」知らず、想定外の年金減額「何かの間違いでは?」
■「もはや無法地帯」2億円・港区の超高級タワマンで起きている異変…世帯年収2000万円の男性が〈豊洲タワマンからの転居〉を大後悔するワケ
■「NISAで1,300万円消えた…。」銀行員のアドバイスで、退職金運用を始めた“年金25万円の60代夫婦”…年金に上乗せでゆとりの老後のはずが、一転、破産危機【FPが解説】
■「銀行員の助言どおり、祖母から年100万円ずつ生前贈与を受けました」→税務調査官「これは贈与になりません」…否認されないための4つのポイント【税理士が解説】