日本人の「老後資金」いくら必要?
♦「老後2,000万円問題」の誤解
2019年6月に金融庁が公表した、あるレポートが物議をかもしました。内容が「老後の夫婦の生活費は、厚生年金だけだと不足するので、2,000万円が必要になる」というものだったからです。
「年金は100年安心ではなかったのか」とか「2,000万円なんて、とても貯められない」などと、マスメディアや野党が騒ぎ立て、レポートは事実上撤回されました。
以前から、公的年金だけでは老後生活が成り立たないのは、よく知られた事実にもかかわらず、トンチンカンで奇異な印象を残した大騒ぎでした。
金融庁のレポートでは、2017年のデータから、「夫65歳以上、妻60歳以上の夫婦のみの無職世帯では、家計調査のデータから毎月の平均支出額約26万円に対して、収入が20万円程度なので、毎月の平均不足額が5.5万円で年間66万円になり、これが20年から30年に及べば、不足額が1,320万円から1,980万円にのぼる」というモデルケースでの試算だったのです。

この金融庁のモデルケースは、貯金がいきなり2,000万円必要というわけでもなく、「夫が会社員、妻が専業主婦」で、かつ「老後まったく働かない」というケースに限ったものでした。このケースでは、働くことにより不足額が解消されます。
つまり、個別の状況に応じて、さまざまなケースが考えられる試算だったのです。
◆若い人ほど厳しくなる「老後資金」
特に、自営業者の場合は、生涯現役で働いて収入を得る前提のため、公的年金は国民年金しかありません。40年加入してひとり当たりの満額受給でも月額6万5,075円です(21年度=年額78万900円)。自営業の人は、老後の年金収入が会社員に比べて低いため、収入や蓄えがないと厳しいのです。
また、2021年10月時点で、65歳以上の高齢者の人数は約3,621万人です。総人口に占める割合は28.9%で、3人に1人近くが高齢者です。この比率は年々上がり、2060年には40%程度まで上がると推計されています。若年世代ほど負担が大きくなっていくことになります。
65歳以上の年金を支える現役世代は、少子化でさらに少なくなるので、年金受給開始年齢を70歳以上に上げるか、年金支給額を減額していくか、選択をせまられます。
現役世代にとって、老後の生活は厳しいものになっていくことが想定されます。現役時代に賃金が低い会社員は年金受給額も少なくなります。賃金アップは喫緊の課題です。

神樹 兵輔
経済アナリスト・投資&マネーコンサルタント
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