日本で年収1,000万円を超える給与所得者は、わずか5%といわれています(令和3年分民間給与実態統計調査)。もっとも、この「上位5%」の勝ち組たちも、年金について正しい知識を持っていなければ老後の資金計画が危ぶまれる可能性があると、CFPの伊藤貴徳氏はいいます。本記事では、Aさん(59歳)の事例とともに、日本の年金制度について解説します。
「長野の別荘は諦めます」 年収1,500万円の59歳・勝ち組サラリーマン、〈ねんきん定期便〉記載の年金見込額をみて人生初の挫折【CFPが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

毎月の年金受給額が「23万円」でも足りないワケ

Aさんの年収は1,500万円で、1ヵ月の給料に換算するとおよそ90万円なので、厚生年金の一番上の等級をすでに超えてしまっています。そのため、年金額の増加が頭打ちとなっている状態なのでした。

 

ちなみに、Aさんの見込年金受取額は約270万円となっていました。1ヵ月に換算すると約23万円です。「1ヵ月23万円ももらえれば、余裕で生活できるのでは?」そう感じる方もいらっしゃるかもしれません。

 

しかし、Aさんはこう話します。

 

「1ヵ月の生活費がだいたい50万円くらいかかっているので、年金だけでの生活はかなり厳しいです。なんだかんだいって、いままでの給料の6割くらいはもらえるんじゃないかなと思っていたんですが、それが、たった23万円ぽっちだなんて! 1/5ですよ! 1/5! 優雅な老後を送るつもりが……こんなの人生初めての挫折です。必死で働いてきてやっと毎日が日曜日生活になるっていうのに、生活水準を抑えて我慢しないといけないなんて!」

 

生活水準は人それぞれですが、一般的に高収入の方ほど生活費は高くなる傾向にあります。しかし、前述のとおり高収入になればなるほど年金額が増加するというわけではありません。

 

生活水準を支えられずに、高収入の方が老後破綻を迎えるケースはよくみられますので、セカンドライフを迎える前に将来の収支バランスを計算しましょう。不足が出る場合は必要資金を準備したり、支出の見直しを図ったりする必要があります。

 

一通りの説明を終えたあと、Aさんからはこんな言葉が。

 

「実は退職金を見込んで、いまのうちに長野に別荘を買おうと思っていました。でも一旦思いとどまって老後の生活に向けて、マネープランをいまから練り直します」

 

 

伊藤 貴徳

伊藤FPオフィス

代表