パート勤務の賃上げと働き過ぎで「扶養内の年収」を超えてしまう
岸田首相は、所得税などの減税と今後の賃上げで、2024年夏には所得の伸びが物価の上昇を上回る状況を目指すとしています。賃上げが実施されるか、されないかはさておき、賃上げが実現されれば、働く側としては嬉しいはずですが、焦点となるのは「本当に物価高騰分以上の賃上げとなるか」ということです。
Aさん家族
夫 45歳(世帯主):年収700万円
Aさん 44歳(夫の扶養):年収135万円
子 16歳(父の扶養):学生
相談内容
毎年、夫の扶養内に収まるようスーパーでパート勤務をしています。ですが、賃上げの潮流を受けてか、時給が100円アップしたことと、年末にかけて人手が足りなくてシフトを多めに入れられてしまったことで、このままだと今年は扶養の範囲を超えてしまいます。扶養内の年収を超えてしまったら、どうなりますか?
年収130万円の壁
時給が100円アップしたということは、仮に1日5時間、月15日働いたとすると、月収は7,500円、年収換算すると9万円増えます。そのようななか、Aさんが心配するのは、いわゆる「年収の壁」でしょう。
Aさんが夫の扶養内となるためには、年収を130万円未満にする必要があります。年収130万円を超えると社会保険料の支払いが発生し、俗にいう「扶養から外れる」という状態になります。
社会保険とは、病気・ケガ等での治療費を一定割合負担してくれる健康保険と、厚生年金などの公的年金制度のことをいい、私たちはこの制度を使うために社会保険料という形で保険料を支払っています。
Aさんの年収が130万円を超えた場合、扶養者(夫)の勤務先へ扶養を外す申請を行わなければならず、かつ、Aさんも社会保険料を負担する必要が出てきます。
扶養から外れた場合、社会保険料はいくらくらいかかる?
Aさんは東京都に住み、年収は135万円です。この場合、健康保険料と厚生年金保険料の合計額は年間およそ27万円となります。社会保険料を差し引いた手取り額は108万円となり、130万円ギリギリで扶養に入っている状態よりも手取り額は低くなります。
「たくさん働いて手取りが少なくなるなんて!」悲鳴をあげ、怒りを露わにするAさん。
なかには、
「こんなに引かれてしまうのなら、扶養から外れるのはもったいない……」
「130万円は超えているけど、扶養から外れずに黙っておこう……」
と考える方もいるかもしれません。
結論から言うと、超えているのに黙っているのはバレますのでしっかりと申請しましょう。 扶養者(Aさんの場合は夫)の年末調整の際に、被扶養者(Aさん)の所得を記入する箇所があり、 扶養から外れる申請をしておかないと、収入が130万円を超えた時点から遡って社会保険料を支払うことになります。
また、その間に健康保険を使って治療費を支払っていた場合は、差額の返還を求められることとなり、大きな手間となります。扶養から外れる可能性があるときは、あらかじめ扶養者と相談しておきましょう。