物価上昇に釣り合わない年金額
年金生活を送る一人暮らしのAさん(70代/女性)は、昨今の物価高によって生活が困窮した人のひとりです。
「毎日の食糧を買うのに、1円でも安いもの、安いものと思っていますが、この2〜3年は特に辛い。なにを買うにも高くて……。食べるものが買えず、1日1食で我慢するときもあります。もう、本当に限界なんです」涙ながらに吐露するAさんの手の甲は骨が浮き出ており、頬は落ちくぼんでいます。
世界的な物価高の影響を受け、日本でも物価の上昇が続いています。 総務省統計局 2020年基準 消費者物価指数全国 2023年(令和5年)10月分によると、2023年の10月の物価は、1年前の同月と比べると3.3%の上昇となりました。 つまり、この1年間で全体的なモノの値段が3.3%上昇したということになります。
一方で、年金はどうでしょうか。私たちが65歳から受け取ることのできる年金も、物価の上昇率等を加味して、毎年改訂が行われています。 令和5年4月分からの年金額をみると、67歳までの方は2.2%の引き上げ、68歳以降の方は1.9%の引き上げとなっています。
国民年金(老齢基礎年金満額)6万4,816円→6万6,250円へ増額
物価の上昇等に合わせて、年金額も増加する仕組みが取られていますが、昨今の物価高はその増加分を超える上昇率となっています。
おひとり様のAさんの年金額は1ヵ月あたりおよそ10万円。この年金を受け取りながらギリギリの生活を続けています。貯蓄はほとんど残っていません。
おひとり様の高齢者は65歳以上の6人に1人の割合であり、そもそもの数が増加傾向にあります。もちろん、離婚したり、死別したりと、おひとり様の理由はさまざまです。ただ、経済的理由から結婚ができなかったというケースも少なくはなく、そのような場合、
1.高齢になり以前のように働けなくなる
2.収入が減少
3.もともと受け取れる年金額も少額
4.生活費が足りずに困窮
というのが、ひとつのパターンとなってしまっています。