“築23年の木造の建物”が節税向きといえるワケ
――では、実際にどのような不動産であれば、短期間で多くの減価償却費を取れるんでしょうか。
黒「はい。これを見極めるには、建物の『構造』に注目してみてください。減価償却費は、対象になる建物の構造によって耐用年数が異なります。
新築の場合ですが、法定耐用年数は下記のように定められています。
- RC:47年
- 重量鉄骨:34年
- 軽量鉄骨:27年
- 木造:22年
物件が中古の場合は、「簡便法」という計算式で耐用年数を求めることができます。
<簡便法による計算式>
法定耐用年数の一部を経過した物件の場合
……償却期間=法定耐用年数-(築年数×0.8)
法定耐用年数をすべて経過した物件の場合
……償却期間=法定耐用年数×0.2
こちらを使うと、法定耐用年数をすべて過ぎている場合の耐用年数は下記のようになります。
- RC:9年
- 重量鉄骨:6年
- 軽量鉄骨:5年
- 木造:4年
この期間で償却することになります」
――法定耐用年数を過ぎている木造だと4年、軽量鉄骨だと5年で経費にできるわけですね。
黒「はい。したがって、節税を考えて不動産を購入するのであれば、
- 築35年の重量鉄骨の建物:6年償却
- 築28年の軽量鉄骨の建物:5年償却
- 築23年の木造の建物:4年償却
などがおすすめです。
注意!出口を見誤ると“節税できない”ケースも…
――いやあ、ということで、これで所得税をゼロにする方法がまるっと完全にわかりましたね!
黒「いやいや、まだ終わりじゃないんですよ。すごく重要なことがあります。それは、出口戦略です」
――出口戦略……? 「所得税が下がってラッキー!」じゃダメなんですか?
黒「考えてみてください。『減価償却期間が短い』ということは裏を返せば、数年で減価償却費が計上できなくなるということです。
そうなると今度は課税対象となる不動産所得が大幅に増え、元の給与所得に合算されて所得税や住民税も増えてしまう可能性があります」
――たしかに……せっかく減価償却費で節税できても、そのあとに所得税や住民税が増えるんじゃ、意味ないですね。
黒「このような現象を、不動産投資家のあいだでは「デッドクロス」と呼んだりします。
減価償却費が取れなくなり、ローンの利息も少なくなってくるので、経費に入れるものが少なくなります。こうなると、計上できる経費より出ていくお金が大きくなるため、キャッシュフローが苦しくなります。資金繰りに困り、最悪「黒字倒産」という可能性もあるのです」
――え~! それは本当に最悪ですね。では、不動産投資節税の出口戦略はどのように考えればよいでしょうか。
黒「はい。これは、『不動産を持ち始めてから5年度以降に売却してしまう』という方法が有効です」
――売却するんですね! でも、結局そのタイミングで課税されることになりませんか?
黒「おっしゃるとおりです。減価償却により、建物の会計上の価値、つまり簿価が減っていくため、売却価格と建物の最終的な簿価との差額が売却益と見なされ、その部分に譲渡税がかかってきます」
――じゃあ結局、節税したっていうより、課税されるタイミングを先延ばしただけじゃないですか?
黒「はい、この減価償却による節税というのは本質的には課税の繰り延べ(先送り)です。しかし、減価償却期間中の所得税・住民税と、譲渡税の税率に差がある場合は節税効果があるといえます。
――どういうことですか?
黒「所得税の税率は、最高で45%、住民税10%も加えると55%になります。
一方、譲渡所得の税率は、短期譲渡所得、つまり、売却年の1月1日時点での所有期間が5年以内の土地・建物を売却した場合の税率は約40%。そして、長期譲渡所得、つまり所有期間が5年を超える土地・建物を売却した場合は約20%です。
――所有してから5年度以上で売却した場合の税金は、20%で済むんですね。
黒「はい。短期で売却しても節税効果は期待できませんが、長期譲渡ですと、売却時にかかる譲渡税は20%です。もともとの税率が50%など高所得の方の場合は、譲渡税を選択した方が節税になりますね。
――なるほど。この税率の差を活用できるわけですね。
黒「税率差が大きいほど節税効果も高くなるので、給与所得が高い方ほど効果がある節税方法といえます」
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