高収入の会社員は、収入が多い分、社会保険料も多く支払っているため、公的年金も人より多くもらえるように思えます。しかし、現役時代に余裕があっても、年金に関する正しい知識を持っていなければ、老後を目前に慌てふためくはめになることも……。本記事では、宮内さん(仮名/59歳)の事例とともに日本の年金制度について、FP事務所MoneySmith代表の吉野裕一氏が解説します。
月収75万円の59歳エリートサラリーマン、退職金2,000万円で“勝ち逃げ”のはずが…一度捨てた〈ねんきん定期便〉をゴミ箱から拾って、驚愕「さすがに何かの間違いでは?」【FPが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

金融リテラシーが低いエリートサラリーマンの末路

エリートサラリーマンといえば、高学歴で教養もあると思われますが、日本では金融教育が行われておらず、お金について考えていないという人も見受けることもあります。

 

とくに日本ではバブル崩壊後にほぼインフレがなかったことで、お金の価値が変わらないことが当然のように感じている人も多いと感じます。

 

さらに公的年金制度も信用しないという話をよく聞きますが、制度についてしっかりと把握している人も少ないと感じ、今回の宮内さんのように公的年金について意識せずに来られ、もうじき、年金生活が迫ってくるというときに慌ててしまうというケースもあります。

 

筆者のところで50代以降の方の相談で多いのは、老後の生活費に対する準備です。子どもが大学を出て、やっと自分たちの老後のことを考えるようになったけど、子どもの教育費や住宅費で貯蓄がほとんどないという人も多くいらっしゃいます。

 

「現状が続く」と思わず、早いうちから対策を

いまではiDeCoやNISAという、老後資金や資産形成に対する税制優遇制度の認知度が上がり、投資に関心を持つ人も増えました。しかし、資産形成は長期で運用することが大切となりますので、まだ子どもが小さいときからなど、できるだけ早く資産形成を行うことで、毎月の負担も少なく教育費や老後資金の準備を行うことができるようになります。

 

しかし実行する人は少ないのが現状です。FPとしての筆者の所感では、将来のことはわからないけど、現状を見ると心配することもなく、同じ状態がずっと続くと感じられている人が多いように感じられます。ただ長い人生は山あり谷ありで、常にいい状態が続くとも限りません。

 

将来のライフプランシミュレーションを行うことで、わからないことが可視化され、今後のお金の流れや問題点などが分かってきて、早いうちから対策を講じることもできます。ぜひ、多くの方がライフプランシミュレーションを行って、安心できる未来を手に入れてもらいたいと思います。

 

 

 

吉野 裕一

FP事務所MoneySmith

代表