高齢化が進んだことで問題となっているのが、「介護」の負担です。自分の親を心配する声も多く、また同時に、同居する親の世話などで「介護疲れ」となるという話を耳にする機会も多いのではないでしょうか。本記事では、山本さん(仮名)の事例とともに介護と老後資金の備え方について、FP事務所MoneySmith代表の吉野裕一氏が解説します。
「それじゃあ、行くね」寂し気な背中を見送った50代娘「いま、後悔しかありません」…年金9万円、70代母が〈サ高住〉入居で陥ったまさかの事態【FPが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

子どもの面倒にはなりたくない…

山本(仮名)さんは、高等学校に通っている娘と75歳の母親と3人暮らしをしていました。山本さんは、6年前の自身の離婚をきっかけに実家で母親との同居を始めました。父親は3年前に他界し、母親は自分の老齢基礎年金と遺族厚生年金を受け取って生計を立てています。

 

数年前、一人で家にいた母親が転倒して足を骨折してしまいました。骨折が治るのには長く時間がかかり、骨折が治ってからも体力が衰えてくるのが目に見えてわかりました。時折、「あれ? もしかして……」と認知症を疑う行動も目に付くようになります。

 

山本さんは50歳を過ぎて、娘も大学に進学しました。78歳になった母親は寝たきりまでではありませんでしたが、あまり動き回ることはなく、座ったままや寝転ぶ時間が増えてきて、山本さんは、仕事から帰宅後も母親の世話が必要となっていました。

 

母親の認知症を疑う場面もありましたが、普通に会話ができていたので気にはかけるものの病院に行くほどではないと判断し、生活を続けていました。

 

ある日、母親から「このまま面倒を見てもらうのも悪いから、どこかの施設に入ろうと思う」と相談を受けました。

 

山本さんは、一緒に暮らしていきたいという想いもありましたが、仕事から帰ってきてからも母親の世話をしている現状に疲れを感じることが多くなり、母親の意向に沿うことにしました。老後施設では同年代の人も多いので、話し相手ができて母親にも楽しみが増えるかもという気持ちもあったようです。

 

特別養護老人ホームに入所できれば、金銭的な負担も少なく済みましたが、母親は要介護認定を受けておらず、入所はできませんでした。

 

そこでサービス付高齢者向け住宅(サ高住)の入所を検討し、近くの施設に入所することになりました。

 

「それじゃあ、行くね」寂し気な背中の母親を山本さんは見送りました。