「自賠責保険に入っていれば安心」…ではない!自動車保険制度の落とし穴
なお、上記は、自賠責保険が切れている一方、任意保険は切れていないというケースについての説明です。自賠責保険が切れたクルマで走行するのは論外ですが、もし自賠責保険に入っていたとしても、「任意保険」に入っていなければ、これも大変危険なことといわざるを得ません。
任意保険に加入していなかったら、本人はもちろん、被害者側も地獄をみることになります。前述したように、自賠責保険は人身事故のみ、しかも、傷害は120万円まで、死亡は3,000万円まで、後遺障害は4,000万円までしかカバーしてくれません。
[図表2]は、人身事故の損害賠償額が高額になったケースをまとめたものです。
事故で被害者が死亡したり後遺障害により働けなくなったりした場合、自賠責保険だけでは到底賄えない可能性があることがわかります。
もし、自賠責保険にしか加入していないと、被害者が賠償を受けられず苦しむだけでなく、自分自身も高額な賠償義務を負って生涯苦しむことになりかねないのです。
ところが、統計をみると、ほぼ4人に1人が任意保険に加入していません。2022年3月末時点で、日本全国の「対人賠償保険」「対物賠償保険」の加入率は、「対人賠償保険」が75.4%、「対物賠償保険」が75.5%です(損害保険料算出機構「2022年度 自動車保険の概況」P114参照)。
法律上は、「自賠責保険」への加入のみが義務とされています。任意保険への加入は文字通り任意です。したがって、最低限の法的義務だけ果たせばいいと考えている人が、「4人に1人」のなかに相当数いることが想定されます。しかし、実際には前述のように自賠責保険では被害者の救済が十分でないケースが考えられるのです(もちろん、車検切れ≒自賠責保険が切れた車両で走行するのは論外です)。
こうなると、自賠責保険の制度の存在が、かえって交通事故被害者の救済の妨げになりかねません。自動車保険制度が「自賠責保険」と「任意保険」の2段構えになっていることの落とし穴といっても過言ではありません。
自賠責保険の制度が創設された1955年当時は、自動車は贅沢品であり、交通量も現在より少なく、自賠責保険で十分だったのかもしれません。しかし、今日は当時とは比較にならないほど自動車が普及し、交通量も多くなっています。また、賠償額の高額化により、任意保険の役割が大きくなっており、自賠責保険の存在意義自体が揺らいでいます。
自賠責保険の内容を任意保険の「対人賠償」「対物賠償」と同レベルの補償とするか、あるいは自賠責保険を廃止し任意保険に一元化して加入を義務化するなど、制度を抜本的に見直すことが必要かもしれません。
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