「出産育児一時金」の財源の一部を後期高齢者医療制度から負担
後期高齢者医療制度の保険料の引き上げに伴い、その一部が「出産育児一時金」の財源に充てられることになっています。
出産育児一時金は、女性が出産した際に、健康保険(国民健康保険、被用者保険)から子1人につき50万円を受け取れる制度です。
出産育児一時金の財源は従来、74歳未満の世代を対象とする健康保険制度の枠内で賄われてきました。しかし、2024年以降は、後期高齢者医療制度からも一部を負担してもらうことになっているのです。
これは、公的医療保険制度と後期高齢者医療制度の境界を一部取り払うことを意味します。
すなわち、従来は、現役世代の公的医療保険制度から75歳以上の後期高齢者医療制度への「支援金」が支払われる形で、現役世代が75歳以上の世代に財政支援を行ってきました。しかし、今後は、後期高齢者医療制度から公的医療保険制度への財政支援も行われることになります。お金の流れだけでみると、支援金の一部が「還流」するのと同視できます。
そもそも、2008年に後期高齢者医療制度を公的医療保険制度から独立させた意味は、75歳以降の世代の医療費の自己負担を軽減するとともに、現役世代が75歳以降の世代をサポートするというものでした。しかし、その前提が一部、揺らいでいるということです。
今後、少子高齢化の進行により、高齢者の人口は増加する一方で現役世代の人口が減少していきます。このままでは、現役世代の負担増大は避けられません。そんななかで、2024年から始まる後期高齢者医療制度の保険料引き上げは、後期高齢者医療制度の枠内における「所得の大小による格差」とともに、「世代間の格差」にも目配りしたものといえます。
公平な社会保障制度を設計するには、今後の人口の動向もふまえ、「所得の大小による格差」だけでなく、「世代間の格差」も考慮していかなければならないということです。
そのなかで、いずれ、現行の医療費負担に関する制度を74歳以下の「公的医療保険制度」と75歳以上の「後期高齢者医療制度」とに分けている合理性・正当性が議論の対象になっていくことが想定されます。
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